「銀齢の果て」ネタバレ用語集 | |||
*「不明」は鯖雄にはわからないところです | |||
*誤り・補足などご意見ください | |||
*補足していただいた方の敬称は省略させていただきました | |||
初出 | 用語 | 意味 | 補足 |
全般 | 銀齢の果て | 元ネタは黒澤明脚本で三船敏郎のデビュー作「銀嶺の果て」(1947年の東宝作品)。 「銀齢」は著者の造語で、本作品17ページの江田島松次郎のセリフにあるように 白髪(銀髪)を山頂に戴いた冠雪に例えて、そういう年齢であることを指す |
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良識 | 「良識」のナンセンスさ、あやふやさ、非情さ、怖さ、残酷さを余すところなく書き切っている。 「『良識』ちゅうもんは、ほんまにええことですやろか」ということで、我々ツツイストとしては 「狂気の沙汰も金次第」のテーマであった「善と悪の確からしさ」をについて起想せねばならない。 著者は多くの作品の中で、「善と悪(良識と非良識)」は我々が思っているほど足場のしっかりした ものではなく、容易に立場が逆転しうるものであるということを問い続ける。 そして、筒井作品が好きになれるかどうかは、この「良識」(≒常識)の崩壊感を楽しめるかどうか にかかっているといっても過言ではない |
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マスコミ | この作品の各所で登場する。 その本質であるところの、無責任さ、非常さ、愚かさ、怖さ、野次馬根性を余すところなく 書き切っている |
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武器 | ワルサー、ライフル、コルト、出刃包丁、ハンマー、カッターナイフ、刺身包丁、登山ナイフ、機関銃 自動小銃、手榴弾、毒薬、ロープ、鎌、猟銃、紐、シャベル、短刀、足(靴)、素手、猪用自動銃 象、肉体(投身自殺)、金槌、金属バット、水中銃、松明(放火)、刀、空気銃、薙刀、小太刀 鎖鎌、槍、錫杖、柳葉包丁、捕鯨砲 |
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2 | 宮脇町五丁目地区 | この作品の主な舞台で、今回のシルバー・バトルに指定された地区 | |
3 | 蔦屋 | 宇谷九一郎の自宅。 老舗の和菓子司三代目 |
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ざる蕎麦 | この作品の冒頭に出てくる宇谷九一郎の昼食。 著者は大の蕎麦好き |
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5 | ワルサー | 宇谷九一郎の所持する武器。 ワルサーはカール・ワルサー社(独)製の拳銃の総称で、日本ではワルサーといえば ほとんどの場合P38を指す |
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6 | 缶入りピース | 宇谷九一郎が最初に殺した正宗忠蔵が吸っていた煙草。 俗に「缶ピー」と呼ばれ、その馥郁たる甘い香りで根強い人気を誇る煙草。 1949年(昭和24年)7月1日発売。 タール28mg ニコチン2.3mg 50本入り750円 |
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7 | シルバー・バトル | この作品内で繰り広げられる老人相互処刑制度の俗称。 この制度は厚生労働省に属するCJCK主催であり、国策である。 主人公の住む「宮脇町5丁目地区」は4月4日からの開始となった。 一ヶ月間地区単位で行われ、最後の一人として生き残ることを目指す。 一ヶ月たって複数名生き残った場合は全員処刑される。 その他細々としたルールは別紙参照のこと |
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8 | 鉄敷町のご隠居 | 宇谷九一郎の後輩である猿谷甚一のこと。 すでに行われたシルバー・バトルの生き残り |
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9 | CJCK | 中央人口調節機構のこと。 厚生労働省直属の組織でシルバー・バトルの主催者 |
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12 | 魚屋 | 宮脇町商店街中ほどにある | |
コルト | 津幡共仁の所持する武器。 コルト特許火器社製の拳銃の総称 |
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13 | ミニエストレージャー | 乾志摩夫の過去の職業。 Mini estrella(スペイン語)→いわゆるミゼットレスラー(小人レスラー)のこと。 111頁に書かれてあるとおり、過去には日本でも大きな人気を誇った時期があったが 差別問題などから現在興行はほとんどない。 職を失った小人レスラーたちは、一部は映画や舞台で小人役として出演したりもしているがマスコミの表舞台で脚光を浴びることはない |
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白木みのる | 1934年5月6日島根県生まれの俳優。 身長150cm(公称) |
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14 | 昭和荘 | 越谷婦美子や志多梅子ら7人の独居老人が住むアパート | |
15 | バトル・ロイヤル | 老人相互処刑制度、俗称シルバー・バトルの基本的ルール。 プロレスまたはサバイバルゲーム用語。 三つ以上の個人またはチームが同時に戦い、自分または自チーム以外はすべて敵という 状況の中で,最後まで生き残ったものを勝者と認めるというもの。 バトル・ロワイヤルとも称するが、これはフランス語読みしたもの(Wikipediaより) |
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16 | 富島松五郎 | 江田島松次郎のことを猿谷甚一がこう評した。通称、無法松。 岩下俊作の作品『富島松五郎伝』の主人公。 『無法松の一生』のタイトルで4度映画化され、それぞれ阪東妻三郎、三船敏郎、三国連太郎 (三國連太郎)、勝新太郎が無法松を演じた |
法水 |
サンセット大通りのエリッヒ・フォン・ シュトロハイム |
江田島松次郎のことを猿谷甚一がこう評した。 映画「サンセット大通り」は1950年公開。パラマウント製で監督はビリー・ワイルダー。 過去の栄光にすがって生きているかつての大女優をグロリア・スワンソン、その忠実な執事の役を エリッヒ・フォン・シュトロハイムが演じた。 エリッヒ・フォン・シュトロハイムは1885年9月22日オーストリア生まれで1957年5月12日没。 映画監督、脚本家、俳優。 「メリー・ゴー・ラウンド」(1923年)や「結婚行進曲」(1928年)、「アンナ・カレニナ」(1935年) 「サンセット大通り」(1950年)など多くの作品で監督・脚本・出演 |
法水 | |
17 | 白銀は招くよ | 元女優の黒崎しのぶが歌った歌。 1959年公開のドイツ映画の主題歌。 作曲はフランツ・グローテ。歌ったのはこの映画の主演でもあるトニー・ザイラー。 日本語カバー曲はダーク・ダックスが歌っている |
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銀嶺セレナーデ | 1941年公開のアメリカのミュージカル映画だが、歌については不明 | ||
喜久雄 | 黒崎しのぶの亡夫 | ||
夕焼けこやけの赤とんぼ | 黒崎しのぶが歌った歌。 作詞は三木露風、作曲は山田耕筰の童謡 |
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18 | わたしはかもめ | 黒崎しのぶの言葉。 チェーホフの戯曲「かもめ」の中の科白。 この後「いいえそうじゃないわ。私は女優」と続く |
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紫綬褒章 | 著者は2002年に授章している | ||
20 | 軍事探偵 | 不明 | |
忘れられない、あの面影よ | 黒崎しのぶが歌った歌。 「何日君再来」の日本語歌詞 |
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灯し火揺れるこの霧の中 | 同上 | ||
何日君再来 | 渡辺はま子が昭和14年に「いつの日君来るや」という邦題を付けて歌い また、昭和15年李香蘭も「いつの日君また帰る 」で歌っている。 昭和55年にはテレサ・テンが中国語で「何日君再来」を歌い日本でヒットした。 |
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俺たちに明日はない | 1967年アメリカ映画。主演はウォーレン・ベイテイとフェイ・ダナウェイ。 男女の2人組みギャング、ボニーとクライドの物語 |
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ベルテ若葉台 | 宮脇町五丁目地区と同じく、今回のシルバー・バトル指定地区 | ||
34 | 被投 | 自分が選んだり、造ったりしたわけでもない世界に否応なく投げ込まれてしまっていること。 被投性(ハイデガー) |
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39 | 寿司 | シルバー・バトルの開催によってによって外食は危険となり、また食材を買いに行くことすらも 危険であるため、夕食などを出前で済ますことになる。 宅配ビザなどは油が過ぎて老人には食べられないので、おのずと食べやすい寿司が選択される。 ただし出前は、バトルエリア内の寿司屋で、かつバトル対象者がいる鈴屋ではなく、エリア外の 寿司屋(2丁目の松前寿司など)からである |
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40 | 広島県熊谷地区 | 宮脇町五丁目地区と同じく、今回のシルバー・バトル指定地区 | |
51 | ガラスはガラス。新聞は新聞 | 不明 | |
53 | 宮脇カソリック教会 | 宮脇町商店街の西の端にある教会 | |
56 | 歳をとるにつれて輸精管を通過する精液の 速度が弱まったためか |
小説新潮1月号 対談を参照のこと | |
58 | 米陸軍省編サバイバル全書 | 元陸上自衛隊三佐の是方昭吾がシルバー・バトル開始直前に陸上自衛隊本部の図書館から 借りてきた本。 ISBN4-89063-145-3 |
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SASサバイバル・マニュアル | 同上。 ISBN4-562-02916-1 |
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59 | ガトリング機銃 | 外部動力によって多くの砲身を回転させ、連続的に弾丸を発射できるようにした銃器。 機関銃よりも早い1862年にR.J.ガトリング氏によって発明された(当時は手動)。 日本では戊辰戦争で使われた記録もある |
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60 | らっしゃあももんが | 電器屋の吉田の悲鳴 | |
74 | 津保山 | 広島県熊谷地区にある山の名前 | |
83 | 宮脇ゴールデン横丁 | 宮脇町五丁目内にある歓楽街 | |
狐狗狸 | 宮脇ゴールデン横丁内にある居酒屋 | ||
モーゼの前の紅海の如く | ユダヤの民衆を率いてエジプトを脱出するモーゼが起こした奇跡(出エジプト記)。 居酒屋「狐狗狸」の客たちが左右に分かれて逃れる様子を表したもの |
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106 | おんあぼきゃ | 寿司屋の鈴屋の言った光明真言。 素晴らしい功徳があるという真言だが、効き目はなかった。 正確には「おん あぼきゃ びろしゃな まかもだら はにはんどま じんばら はらばりたやうん」 |
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私が死ぬと同時にあの子の面影も消える | 不明。 著者の過去の作品「残像に口紅を」に元ネタがある、との情報あり |
支那チク夫 | |
かけがえのないこのわたしを殺さないで | 不明 | ||
107 | この作家の過去の作品では〜 | 著者自身の過去の作品における、ドタバタ死のパターンのひとつ。 また主人公が著者の他の作品をよく読んで知っているというメタフィクションにもなっている。 ツツイストであれば、当然この場面でニヤニヤするはずである |
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ほにゃらいけんか | うどん屋の阿波徳が銃を撃ったときに喚いた言葉 | ||
112 | メゾン・ロンサール | 国道に面したマンション。 三人のシルバー・バトル対象者が住んでいる |
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117 | カチコ・トラネ・ドドミ・メケハ | 宮脇ゴールデン横丁内にあるバー「早苗」にいるホステスの名前。 著者の過去の作品においても、どうでもいいホステスの名前には、この名前が使われている |
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118 | コングさん | バー「早苗」のホステス達によって付けられた猿谷甚一のあだ名 | |
コンビニ | 宮脇町商店街内にあるコンビニエンスストア。 元自衛官の是方昭吾が立て籠もったのは、ここの二階の商品倉庫である |
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122 | 雲雀アパート | 三名のシルバー・バトル対象者が住むアパート | |
124 | スポーツ扱い | シルバー・バトルに対するマスコミの報道を見て、猿谷甚一がこう評した | |
136 | 最大多数の最大幸福 | イギリスの哲学者・法学者ベンサム(1748〜1832)が唱えた功利主義哲学の根幹を成す言葉。 民主主義的政策の基本的概念。 「the greatest happiness of the greatest numbers」 |
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137 | マスコミから干された何とかいう似非 ヒューマニスト |
不明 | |
143 | どはたま | 是方昭吾の叫び声 | |
145 | 国民の義務だぜ。邪魔する者は処刑しても いいことになってるんだ |
是方昭吾がコンビニ店員に言った脅し文句。 しかし警察に拘禁されることはあっても、処刑まではされないと思われる |
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148 | 葬いのボサ・ノバ −ソニア・ローザに捧ぐ− |
シルバー・バトル区域外の空きビル前で、天徳寺の住職である羅呑ら三人組のバンドが 演奏していた曲で、作曲は山下洋輔、作詞は著者。 ソニア・ローザはブラジル出身のキュートなボサ・ノバ・プレイヤー。 1969年ごろ日本でデビューしている。 ちなみに、著者の過去の作品「超能力・ア・ゴーゴー」には「弔いのロック」という曲が登場する |
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157 | かけがえのないわたしの命が死ぬ | 不明 | |
かんくらいってんいててててててて | 神父の牧野伸学が生殖器を切断された際に発した喚き声 | ||
158 | エリ、エリ、レーマ、サバクタニ | 牧野伸学の最後の叫び。 意味は「神よ何ゆえに我を見捨て給うや」で、キリストが磔にされた際に言った言葉。 ちなみに「エリ・エリ・レマ・サバクタニ」は2005年12月に公開された著者出演の映画の題名 |
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160 | 睡眠薬 | この作品中、常盤安菜の夫である東平が二度眠らされている | |
173 | 松前屋 | 創業80年の昆布の老舗。 | |
がちがちがちがちがちがち | 昆布屋の三矢掃部の義歯の鳴る音 | ||
188 | どーれーい | 江田島松次郎が機関銃を抱えあげるときに発した声 | |
ばりべりぼ | 本来なら「ばりべりぼりばり」となるのだが、途中で機関銃の弾が切れたためこうなった | ||
190 | あちちちちちちちちち | 火がついた屋敷での江田島松次郎の言葉 | |
193 | あちちちちちちち | 手に飛んだ志多梅子の鮮血の熱さに驚いて、津幡共仁が発した言葉 | |
194 | ほんぎゃらあんさん。ふんだあらんか | 龍崎家の老婆が死ぬ直前に叫んだ言葉 | |
196 | あちちちちちちちち | 顔に浴びた布施花子の鮮血の熱さに驚いて、風間実が発した言葉 | |
198 | ぶるぶるぶるぶる | 座間芳太郎が寒いといって震える声 | |
199 | 命短し、恋せよ乙女 | バー「早苗」のホステス、ドドミが座間芳太郎に歌った歌。 大正4年、芸術座の舞台「その前夜」で松井須磨子が歌った。 題名は「ゴンドラの唄」。作曲は中山晋平、作詞は吉井勇。 黒澤明監督の「生きる」の主題歌として有名 |
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おらは死んじまっただあ | バー「早苗」のホステス、メケハが座間芳太郎に歌った歌。 ザ・フォーククルセダーズが歌った大ヒット曲。 作曲は加藤和彦、作詞はザ・フォーク・パロディ・ギャング |
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げ、ふぬ。がほごほげほ | 座間芳太郎が飲んでいたブランデーに噎せる声 | ||
200 | 座間見ろ | 風間実が座間芳太郎に言った言葉。 「ざま(様)みろ」と「座間」という名前とを掛けている |
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202 | 喫茶店「ルーラ」 | 宮脇町商店街内にある喫茶店 | |
208 | あああちちちちちち | 顔に浴びた渡部捨三の鮮血の熱さに驚いて、篠原セツ子が発した言葉 | |
209 | 血みどろ砂絵 | 都筑道夫が書いた「なめくじ長屋捕物さわぎ」シリーズの1。 絶版 |
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どぎゃあまあまあまあまあまあ | 篠原セツ子に襲いかかられた大月艶の叫び | ||
214 | うどんの阿波徳 | 宮脇町商店街内にあるうどん屋 | |
219 | スラップスティックとあらば | ツツイストが当然予想するであろう二人の会話と情景描写を省くことにより、スピード感を保った まま読者自身にそれらを鮮明に想像させる手法 |
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タオル工場 | 魚屋の裏手にある。 蓼夫妻が捕鯨砲ごと飛び込み、ボイラーが爆発した |
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223 | ぷあお | 象の団五郎の咆哮 | |
237 | ほいだらうけたか | CJCKに突入する猿谷甚一の叫び | |
239 | また、死に損なっちまったよう | CJCK襲撃直前で家に引き返した宇谷九一郎の言葉 |