「おまえ、すごい成績いいなぁ。やるなぁ。」
担任の先生から言われた。
高校に入って初めてのテストで私はかなりいい成績を残した。
「おまえ、○○中出身なんだって?頭いいんだなぁ。期待しているぞ」
私の卒業した中学は公立なのにレベルが高いことで有名だった。
(公立中学でレベルの差があるなんておかしいぞ!)
当時の私は真面目だったので、先生の期待にこたえられるように勉強も頑張らなきゃ、と思った。


テニス部に入ってすぐわかったことは、私にはテニスの才能が無いということだった。
理屈ぬきで向いていないのだ。
でも当時の私は真面目だったので、頑張ればみんなに追いつき追い越せることができる、
人間、努力が大切だ。そう思い込んでいた。

「ファイトです」「ガンバです」大きな声で叫びつづけた。
「代わります」重い荷物は進んで持った。ボール拾いを懸命にやった。
家では腹筋100回、背筋100回、腕立て伏せ100回、欠かさなかった。
コート整備は昼休みに1年がやる仕事だった。早弁をして昼休みはコート整備をした。

一緒に入った1年生16人にだんだん実力の差がついたのはいつの頃だろうか。
初めてテニスコートに入ったのはA子だった。
A子に続いて実力があると思われる1年は次々とコートにあがり、先輩たちと一緒の練習に参加した。
これは何を意味するのかというと、要するに下手な人間には雑用が増えるということだった。
(かけ声、ボール拾い、荷物持ち、など)
だんだんテニスから遠さがって行くような気が・・・

A子達の態度も変わっていった。
「コート整備はあんたたちがやっといて」
コートにあがれない人に向かって指図をするようになった。
くやしいけどがんばろうね、辞めないでいようね。数人でコート整備をするようになった。
それでいてA子達は先輩に向かって「私たちがやりましたぁ!」だもの。嫌になる。
雑用におわれる日々。ぼーっとすると先輩にどなられる。
助けて・・・


「おまえどうしたんだ?」
次に行なわれたテストではかなり成績が下がった。
当たり前だ。部活に疲れた私は家に帰ったらすぐ寝てた。授業中も寝てた。
「おまえはやればできる生徒なんだ。がんばってくれよ。」
担任は言った。実はこんなことがあるんです、なんて言えなかった。


「コート整備やっといて!」
お人よしの私。めんどうなことは全部yukikoにやらせてしまえ。そんな空気ができた。
弁当抜きで1人でやるコート整備。辛いけど手を抜くことはできない。
先輩には1年の間にこのようなことがあるとは気づいてなかったらしい。
夏が近づいてきた。暑い。疲れた。頭がおかしくなるのが自分でもわかる。


つづく