17歳の誕生日は病院でむかえた。
プレゼントは母が買ってきた小さなショートケーキ。そしてかわいらしいブーケ。
17歳ってもっと素敵なんじゃなかったの?
人生でもっとも輝く時代。青春真っ盛り。ほら、歌にもあるじゃん?
そんなのとはかけ離れた自分。
薄暗い病室で泣きながらケーキを食べた。
花はすぐに枯れた。
やっと私に、外出許可が出た。
精神科の入院患者の治療として外出と外泊がある。
外出は医師の許可のもと外に出ることができる。
外泊は家に戻ることができる。最初は一泊くらい。
家で家族とちゃんとやっていけるかみる。二泊、三泊、と試してみて
大丈夫なようなら退院が近い、と噂された。
外出許可の日、父と母が車でやってきた。
父は言った。「どこでも好きなところへ連れてってやるよ」
私は「遠いところへ」と言った。
札幌の中心街を抜けると広々とした感じになる。
北海道の景色。爽やかな空気。どこまでも続く道。
私は今、おかれている状態を少し忘れることができた。
地平線。大きな空。感動というものを少し思い出した。
だが空が夕焼けに染まると私の心は苦しかった。
それは病院に戻る合図なのだ。
家族も黙っている。車は病院への道へ進む。
時間どうりに病院に着いた。
看護婦に背中を押されて病棟内に入れられる。
ここで「嫌だ!」と暴れたら入院が長引く。そう思い込んでいた。
週末になると外出許可が出るようになった。
北海道の大きな大地、空を思い浮かべながら
狭い病室で耳栓をして「コボちゃん」を読む。
そんな日々だった。