管理人の早稲田ラグビーコラムです(コラムといいつつもそんな立派なものでもないんですけどね…)。更新は不定期です。気が向いたときに更新しますので、たまに覗いてもらえたら嬉しいです。


Vol2. 2007/2/8 「Happy End」

2003年4月20日、上井草で迎える初めての入部式。真新しい純白のジャージに包まれた東条組の面々が晴れて早稲田大学ラグビー部入部を認められた日です。「うわっ、やんちゃ!」…思わず周りのファンが声をあげるほどに異彩を放っていたのは、まだ当時背番号15を背負っていた矢富勇毅選手でした。新入生歓迎試合で先輩達に荒々しいまでの闘志をたぎらせて、ボールを持っては周囲にパスするという選択肢はなく、18歳の少年は自慢の脚力をこれでもかとばかりにアピールするかのようにこの日の為に整えられた緑の絨毯の上を疾走していました。

そして今年、ラストイヤーとなった矢富選手、上井草の練習では常に中心で声を出してチームをまとめている姿がありました。練習を見ていた新聞記者が「知らない人が見たら、矢富がキャプテンに見えるだろうね」と冗談っぽく笑っていました。

2006年12月3日、終盤スキを見せた早明戦の後、記者に囲まれた彼は、”交替するまで気持ちよくプレーできたか?”と聞かれてこう答えました。

「最後の最後、ああいうふうに取られたのはチーム的にもよくないなと思った。けどそこは替わった選手たちがしっかりと意識すべきだったし、ムラのあるチームを作ってはいけないなという反省材料にもなったんで、そこは謙虚に受け止めてやっていきたいなと。僕らだけでは勝てないんでもっともっと下の人にも伸びてもらって、それでワセダの140人で戦っていかないとダメなんでそこはいい反省材料ができたかなと…そういう風に受け止めてやっていきたいと思う。」

質問は”交替するまでの彼”のプレーに対してのものであったにも関わらず、出てきた言葉は”交替した後のチーム”としての反省点ばかり、もうそこには3年前、オレがオレが…と周りを見ずに前へ前へと進み続けたやんちゃな18歳の面影はありませんでした。

2007年2月3日、早稲田大学ラグビー蹴球部のプレーヤーとしての全てを終えた彼は居並ぶテレビカメラの前に立ち、インタビュアーからの質問”4年間を振り返ってみてどうでしたか?”に感慨深げにこう答えました。

「最後負け…っていう形で終わってしまったんですけど、ホントワセダに入れてすごい良かったし、ワセダがすごい大好きになれたし、幸せでした…。」

自分の為に…、いつしかそれがワセダの為に…へと変わりながら戦い抜いた彼が自身の4年間を「幸せだった」と最後に口にしました。

勝って終わるのだけが「Happy End」じゃない…東条組のメンバーがみんなそれぞれに幸せを感じてこのメンバーでやれて良かった、一生の仲間ができたと思うのであれば、それもまた「Happy End」なんだと思います。

追い出し試合の彼らの最高の笑顔を見て、今その思いを強くしています。






Vol1. 2007/1/18 「今日からがスタート」

東条組大学選手権決勝前日、上井草では恒例のBCゲバが行われました。試合開始数分前に上井草グラウンドに到着すると、懐かしい顔を見つけました。清宮ワセダの”名”学生コーチ、山岡正典前シニアコーチです。休みを取っての上京、「今日は”今田”を見に来ましたよ」との事。”今田”とは勿論、今田圭太ジュニアコーチのことです。

思えば、山岡コーチも学生コーチ1年目(諸岡組)時はジュニアコーチ、同じ決勝前日のBCゲバでCチームを率いていました。この諸岡組の決勝前日のBCゲバは壮絶でした。前半で27-5とBチームが順当にリード。ところが後半Cチーム怒涛の追い上げで3連続トライ、ゴールポストに寄っかかって見ていたはずの山岡コーチはいつしか、22mラインまであがって(笑)、絶叫して激を飛ばしたり、ガッツポーズを作ったり…。最終スコア27-26、Bチーム勝利も、山岡コーチ率いるCチームの戦いぶりは涙なくしては見られないほどに熱く情熱的でした。

そんな思いがあって、同じ立場でこの日を迎える今田ジュニアコーチの名前が出たのだと思います。

そして、その今田コーチ率いる濃紺のジャージをまとったCチーム。序盤からFW陣がまとまりを見せて、巧みにずらして前に出るモールを軸に3トライを取りきるなど奮起すれば、スタンドオフ細川明彦選手は右足に何かが宿ったかのようなスーパーキックを連発、ムードを高めます。ナンバーエイト成田翔選手、スクラムハーフ三井大祐選手ら4年生が要所で大きな声でチームを引き締めて一体となったCチームが結局34-21でノーサイドの瞬間を迎えると、選手達、そして今田コーチは優勝したかのように喜びを爆発させました。

そして、サブグラウンドに移り、円陣を組みます。「D以下も集合!」円陣の中で誰かが呼びます。Cチームの周りをDチーム、そしてコルツのメンバーが更に取り囲み、大きな輪ができました。輪の中心ではジュニアチームを引っ張ってきた4年生が一人一人思いを後輩に伝えています。その中で三井大祐選手が関西弁で…

「今日勝った事を喜ぶのもええ、でも…。俺らはまだジュニアやねん。オレら4年はもう終わりやけど、3年以下はまだ先があるんやからな。一人一人の力で劣っていても、気持ちさえしっかり持っていればやれるという事を今日証明したやんか。3年以下は今日のことを忘れずに今日からがスタートやと思って頑張って欲しい。」

…というような事を訴えかけていました。

翌日の大学選手権敗戦後、東京ドームホテルの大学選手権報告会で五郎丸歩選手は「1日1日常に勝負していくこと」の大切さを語りました。
公式HPによれば今日から各自ポジ練スタート。”荒ぶる”奪回に向け、ワセダはまた走り始めましたね。

「ワセダ、ここから!」