(3) ワシントン州ポイントロバーツ −気づかなかった(?)飛び地
 

この飛び地は、政治的な妥協の結果として人為的に境界が設定された結果として生成された例です。ポイントロバーツは、カナダのバンクーバーの南にある小さな半島の先端部分です。

独立後のアメリカはミシシッピー川を越えて、西へ西へと領土拡張(購入や割譲)を続けたのに対し、イギリス(当時のカナダは英領)も、バンクーバー島のビクトリア(現在はブリティッシュコロンビア州の州都)を拠点として、毛皮の交易活動を中心に利害関係を有していました。

19世紀半ばになると、西部開拓の進行に伴い、両国の国境を画定する必要が生じ、アメリカ側は、従来、ロッキー山脈以東で確定していた、北緯49度線を延長する形で国境が設定されるべきだと主張しました。この案は、イギリスの拠点ビクトリアのあるバンクーバー島を二分し、しかもビクトリアがアメリカ領になるということで、イギリスには受け入れがたいものでした。イギリスは妥協として、「大陸部分では北緯49度を国境とするが、バンクーバー島はイギリス領とする」との案を提示し、結果的に合意に達しました。

このように国境線を引くと、ポイントロバーツが飛び地になるという点については、どうやらまともに検討されてはいないようです。通信事情や交通事情も悪く、測量も完全ではない当時、遠く離れたワシントンやロンドンの外交官には、そもそも飛び地が生ずることさえ気づかなかったというのが真相だと思います。仮に知っていたとしても、アメリカ側は領土が増える分に文句ないでしょう。一方イギリス側はビクトリア確保が交渉で譲れない一線で、(当時)人も住まない岬など、どうでもよかったでしょう。

私は実際にこの地に行きましたが、人口750人、ガソリンスタンドが数軒あり、安いのでカナダからの客が結構いました。また、スーパーが1軒、カジノ(古いパチンコ屋といった雰囲気)が1件といったところで、基本的には海に面したコテージが立ち並ぶ、静かな村という風情でした。アメリカなので、ものの値段などはドル表示でしたが、カナダドルも通用します。

 



アメリカ・カナダ太平洋岸国境付近

 


ポイントロバーツへの入国地点(奥側が南=アメリカ)
必ずここに戻って来るので、
パスポートにスタンプは押印されません。

現在は無くなってしまった飛び地としては、以下があります。

★現メイン州:マサチューセッツ州飛び地
 アメリカ独立以来、1820年のメイン州成立まで、約40年間マサチューセッツ州の飛び地でした。

★現オハイオ州北東部:コネチカット州飛び地(係争地)
 独立直後のコネチカット州は、現在のオハイオ州北東部に当たるエリー湖岸地区の領有を主張していました。ただ、1800年にOhio Territory が成立する頃には、このような主張は行われていません。

 


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