(4) キューバ・グアンタナモベイ海軍基地 −”敵国”の中の軍事基地


キューバ地図

 

フロリダ半島からメキシコ湾を挟んですぐ南に位置するキューバ。もともとは、他の多くのカリブ海諸国と同様、アメリカ資本によるプランテーション経営が中心の経済でしたが、1959年にカストロが共産主義革命(親米政権の打倒)に成功し、アメリカ資産の接収、農地改革等を行ったことから、1961年1月にアメリカはキューバとの国交を断絶し、米州機構からキューバを除名しました。現在、首都ハバナとアメリカの都市を結ぶ飛行機の直行便さえありません。1962年には、ソ連によるミサイル基地建設をアメリカの偵察機が発見し、施設撤去をめぐって核戦争手前までいった「キューバ危機」で、その名が世界に知られました。

そんな、アメリカとは数十年来の「犬猿の仲」のキューバですが、実は、キューバの南東部、グアンタナモ市の南にある湾内(グアンタナモベイ)には、米軍基地があります。広さは116 km2と結構な面積があります。その成り立ちは以下のとおりです。

1898年、米西戦争に勝利したアメリカは、スペイン領だったカリブ海の島々を自国の勢力下に入れ、キューバがその典型でした。グアンタナモ湾については、給炭地(当時はまだ軍事用も含め蒸気船です)として利用すべく、キューバが独立した1903年に米−キューバが条約を締結し、年2000ドル(現在のレートなら約22万円)でアメリカが無期限租借することに合意しました。1934年に条約が改正され、租借料を年4085ドル(同約45万円)とするとともに、租借が終了するのは、(1)両国の合意があった場合か、(2)アメリカが基地を一方的に破棄した場合と決められました。また、条約上、「主権を持つのはキューバだが、アメリカが完全な司法管轄、行政支配権を持つ」とされました。そういう意味では、法的にはキューバ領で、アメリカが実効支配ということになります。

革命後、キューバの政権を掌握した「反米」のカストロは当然、基地の返還を求めますが、アメリカが出て行くわけがありません。1962年のキューバ危機を経て、1964年には遂に、キューバ側は基地への水の供給を停止します。アメリカ側は対応策として当初、隣の島ジャマイカから水を調達しましたが、急ぎ、海水の淡水化施設を建設し、以後現在に至るまで「自給自足」の体制となっています。

この基地、アメリカが本土外に設置している基地の中では最も長い、100年の歴史を持っています。また、アメリカと国交がないにもかかわらず軍事基地があるという、唯一の例です(ある意味当然でしょうが)。最近は9・11以降のアフガニスタン攻撃で捕らえたテロリスト容疑者の収容所ともなっています。

 

  
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