アメリカの姉妹都市を調査すると、台北・高雄を筆頭に、特定の台湾の都市がアメリカの複数の都市と姉妹都市提携を結んでおり、こんなに沢山ケアできるのだろうか、と思ってしまうほどの数です。台北の姉妹都市は45、高雄の姉妹都市は21もあります。そこで、台湾の都市について現状を調査するとともに、その傾向について考察を加えました。
私は当初、台湾の都市は国交の無い国との外交政策の一環として姉妹都市を位置づけているのではないか、と思っていました。調査の結果、アメリカ・オーストラリアに関してはこの仮説が適当に思いますが、それ以外の国には必ずしも当てはまらないようです。明らかに、中華民国と国交がある中南米や西アフリカの国々の首都、もしくはかつて国交があった南ベトナムや韓国の都市といったラインナップです。台湾と外交関係のないアジアやヨーロッパの国々は非常に少ないのが現状です。また、締結時期をみると、1990年代以降の締結相手が急増(台北の場合、45のうち18が1990年以降)しています。
したがって、相手方は3つのパターンに分けることができるます。
1)アメリカ、オーストラリアの姉妹都市:
特に1990年代以降、非中央政府関係の戦略的な強化として姉妹都市が位置づけらている。全体の数からいえば、アメリカの占める割合が圧倒的であり、台湾の対米関係重視がうかがわれる。
2)中米・西アフリカの姉妹都市:
中華人民共和国との間で「国交がある国」の取り合いの状況(よく変動するが、現在中華民国と国交がある国は20カ国台)の中で、台湾と外交関係がある国を「つなぎとめる」一手段として、姉妹都市関係が用いられている。
3)韓国・フィリピン・ベトナム南部の都市
かつて台湾と国交があった国々であり、当時の関係が残存。
一方、姉妹都市関係を締結すると、当然、交流事業などに一定の費用が伴うわけで、これだけの関係を維持するため、自治体はかなりの財政支出を行っているようです。報道によれば、実際、2002年に台中市がホンジュラスのサンペドロ・スーラ市との姉妹都市関係を新たに締結しようとした際には、「お金もかかるし、こんなに多くの姉妹都市が本当に必要なのか」と市議会で問題になり、市長が「ホンジュラスとの外交関係(=国交の維持)に照らしても重要」と答弁し、議会も渋々了承した、との経緯があります。
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