Q 子供のころから夜排尿をしていたが、ひとり暮らしをして以来、夜尿症が復活!

 社会人1年生の23歳の女性です。小さい時からおねしょがあるために、祖母に毎日夜中に23回は起こしてもらって、トイレにいってました。おこしてもらうとおねしょはせずに済みましたが、たまに合宿など祖母のいない環境では失敗することが多かったように思います。

今年、はじめてアパートを借りてひとりで暮らしはじめました。大学を卒業して就職したこともあり、だんだん疲れて夜起きることができなくなったら、おねしょが始まったのです。いまでは、おねしょが心配で、仕事にも支障を来しはじめています。仕事はパソコン業務で、ずっと部屋の中で過ごしていますが、これもやはり疲れの原因です。

おねしょは、毎回、シーツまでぐっしょり濡れます。

排尿回数は、昼間7回で正常だと思います。どうしたらいいのでしょうか?

 ●23歳 OL ●妊娠・出産/なし

 

 

A  継続的に夜おきる習慣があると夜尿症がなおらないこともあります。

あなたの場合は、夜間起こされる習慣があったことが、まず最初の問題です。(ただしそういう訓練的な治療法をおこなう先生もおられますが、この本ではおこさない方針で解説します。)このことは、あなたの身体の尿をコントロールするホルモンのリズムに関係する問題です。正常では、昼間は多くの尿をつくり、夜間は尿は少しだけになります。これは、夜間に抗利尿ホルモンというホルモンが働いて尿を濃縮させるからです。赤ちゃんのときは、このホルモンは分泌されていないので、昼間も夜間も同じような尿ですが、成長とともにホルモンが分泌されるようになっていきます。あなたの場合は、ずっと夜間に起されてきた事により、このホルモンが働く必要がなかったといえます。この為に、このホルモンはいまだに十分なはたらきをせず、夜間の尿量が多くて夜尿症となっているのではないかと思います(抗利尿ホルモン不足・機能低下による夜間多尿)。

本来は、夜間、徐々に尿が膀胱にたまり、そのことを膀胱から脳に連絡をして、脳から「もうこれ以上尿を作らないように」と抗利尿ホルモンが分泌されます。しかし、夜間に排尿してしまいますと、膀胱からの連絡がなくなります。このことをくり返すと、脳からは抗利尿ホルモンが出てこなくなります。

抗利尿ホルモンをどうしたら正常にでるようにすることができるか?このことは誰でも思います。そこで、自分でできることには、次のものがあります。

1)排尿日誌を書く

いつでもそうですが、排尿日誌はいろいろな情報をおしえてくれます。このように夜間の排尿が習慣になっている方では、膀胱に尿を一定以上ためられないこともあります。そうした膀胱の昼間の最大容量をみるために有効です

2)膀胱訓練をする

膀胱に一定以上の尿をためたことの無い方では、膀胱をひろげることが大切です。このために、膀胱にある程度以上の尿をためて我慢するようにしてみると徐々に膀胱が拡張します。尿路感染症がなく、逆流がないことが条件です。

3)昼間と夜間のリズムをとりもどす

昼間に部屋にとじこもり仕事をされていますと身体は昼夜の区別がつきません。午前中は、ジョギングをする、体操をする、日光を浴びるなど、昼間を意識するように努力します。

4)夜間は覚醒しないようにする

夜間、このまま起きる癖をつけていてはいけないので、おむつをしてでも安心して寝ることが大切です。おむつをすることは決して恥ずかしいことではなく、治療の一貫だと考えて下さい。

5)水分制限をする

 排尿日誌から何時に飲水すると尿がでるのかわかるはずです。そこで、水分はできるだけ午前中にとり、夕食後、寝る前などはとらないようにしてください。もちろん、仕事の関係からお酒をのむこともあるでしょうから、お酒を飲んだあとは尿が近いのはしかたないこととして考えて下さい。お酒のあとで夜尿が多いために、お酒以外は口にしない方もいますが、そうするとお酒による利尿のあと、脱水をおこしています。この脱水は身体には良いことではありません。そこで、お酒のあとは、お茶など水分を補給すべきなのですが、そうするとますます夜尿の可能性は高まります。ですが、脱水になることに比較すればよいことなので、その日の夜は無理に飲水制限をしないようにしてください。つまり飲酒後の水分摂取の分を考慮して飲酒量を制限する必要があります。

 最後に、抗利尿ホルモンの治療は泌尿器科でできます。これらの日常の生活に気をつけたうえで効果がみられなければ受診して下さい。まずは本当にホルモンが原因か、他に原因がないか、を調べることが先決ですね。

 

(海外文献から)

スエーデンからの報告です。1413人の学童期の子供について調べたものです。そのうち、887人が夜間起こされていました。夜に起こされることと、不眠、骨の痛み、夜尿症、夜間頻尿、夢遊病などは関係があるとの結果を示しました。(Neveus Tら、Sleep habits and sleep problems among a community sample of schoolchildren.  Acta Paediatr 2001 Dec;90(12):1450-5

 

 

(海外文献から)

米国ノースカロナイナ州からの報告です。

夜尿症についての最近のコンセプトをまとめたものです。それによると、4歳は25%5歳は15%、6歳は10%、10歳は5%、15歳は1%に夜尿症があります。両親が夜尿症の場合、子供は40%に夜尿症があります。子供は寝ている間にしばしば膀胱の充実感を感じます。特に膀胱の容量の小さいお子さんではそのことが多いのです。精神病のお子さんはまずありません。治療としては、必ず寝る前に排尿をさせてください。睡眠前はカフェイン、チョコレートなどは避けます。夕食以降の水分制限をおこないます。過剰な塩分も尿量を増やすので制限します。おねしょ予防するアラームでは、70%に効果があります。治療薬としては抗利尿ホルモンのDDAVPを用います。Lawless MRら、Nocturnal enuresis: current concepts. Pediatr Rev 2001 Dec;22(12):339-407

 

一方、アラームの効果に疑問をもった論文もあります。3−6歳では、夜尿症がなおっていますが、6歳以降は投薬などが必要であったそうです

van Son M, The effectiveness of dry bed training for nocturnal enuresis in adults: a 3, 5, 6 years follow-up.Behav Res Ther. 1995 Jun;33(5):557-9.

 

行動療法:アラームシーツによる条件づけ

アラームという器械は、膀胱が膨らむ(膀胱内圧の上昇)ことを理解させるものです。排尿するとシーツの配線回路が通じてブザーが鳴る仕組みで、これにより覚醒をひき起こします。覚醒の結果排尿の制止が起こるという過程を繰り返すことで、膀胱内圧の上昇覚醒→排尿制止ということを体に覚えさせることができる、という原理です(条件づけといいます)。日本では特に小児科において、夜尿症は「起こさず」が基本です。起こす器具により自然な睡眠が障害さる可能性もありえますので、お子さんの場合は推薦はできないという考え方です。本書でもお子さんに関しては、この考え方ですすめています。しかし、今回のお手紙のような成人の場合は、そのケース・バイ・ケースで考えていくべきで、アラームにより、起こされるのではなく自然に起きれるようになれれば、それで生活の満足がえられる方もおられます。

ただ、残念ながらまだ成人の夜尿症に対してのアラームによる効果をみた論文はありません。ハーバード大学の関連病院でも調査の浅い分野です。