尿失禁の分類と対策
(1)腹圧性尿失禁 女性においては膀胱・子宮などをささえる骨盤底筋群の弛緩により、膀胱が下垂したり、括約筋不全により膀胱頚部や尿道が弛緩したりすることにより、尿道抵抗が低下し、咳やくしゃみなどの簡単な腹圧時にもれてしまうものです。前者は、尿道が「ぐらぐら」とぐらつき、後者は尿道が「すかすか」になっていると想像してください。切迫性尿失禁と合併している場合は、混合性尿失禁といいます。咳きなどをしたその時に尿失禁がおこるものが腹圧性尿失禁、腹圧動作の後1?2秒してもれるものを混合性である可能性が高いのです。治療には、理学療法(骨盤底筋体操、歩行訓練など)、薬物療法(スピロペント、トフラニールなど)、外科的手術(尿道コラーゲン注入、TVTスリング手術、膀胱頚部挙上術など)があげられ、その大半が治療可能と考えます。日常生活が可能で、理解と意欲があり、週に数回の尿失禁がある方は治療をすべきでしょう。
(2)切迫性尿失禁 高齢者の70%前後に存在します。蓄尿時に膀胱の不随意な収縮がおこり、尿意とともに尿が漏れてしまうものです。頻尿・尿意切迫感という膀胱刺激症状を認めます。膀胱炎のように知覚が亢進して尿がもれる感覚性と、脳血管障害のように膀胱の不随収縮による運動性のものがあります。膀胱が十分に拡張する前に尿失禁をおこすため、1回量は少ないです。環境的なアドバイス、時間排尿誘導、排尿訓練、と薬物療法が有効。薬物療法は、残尿(50ml)の無い場合は、抗コリン剤(ポラキス、バップフォー)で膀胱容量の増大をさせます。尿路感染が存在する場合は、抗菌剤を必要とします。なお、切迫性尿失禁は尿道からの膀胱留置カテーテル挿入は適応がありません。膀胱瘤による刺激の場合は、膀胱瘤そのものを手術しないとなおりません。
(3)溢流性尿失禁 この尿失禁は、排尿後に膀胱内に著明な残尿が存在するために、尿が「あふれもれる」ものです。背景に、尿排出障害があり、蓄尿障害である前者2つと大きく異なります。原因は大きく二つにわけられ、(1)前立腺肥大症などによる尿道の通過障害で女性にも認められるもの、(2)糖尿病・骨盤内臓器手術後にて末梢神経障害を持ち膀胱の収縮障害をおこしたものです。尿排出障害は重症であり、尿失禁とともに、尿路感染・膀胱結石・水腎症・腎機能障害などを引き起こすことがあります。
(4)高齢者での複雑な症例 高齢者では、上記3つの尿失禁の原因に、骨盤底の弛緩による膀胱瘤を合併している症例や、女性ホルモンの低下にともなう尿道の競作、萎縮膀胱などがあります。また、歩行障害・痴呆などが原因でおこる尿失禁(機能性尿失禁)を背景にもつ場合もあります。