鉢ケ峯のホタル体験記       

 以下の文章は、「鉢ケ峯の自然環境とゴルフ場問題を考える会」(現在の「鉢ケ峯の自然を守る会」の前身)が発足して間がない頃、現在のホタル観察ポイントを初めて発見したときの記録です。
 ホタルの発生数は年により違うのですが、その原因はよく分かりません。ただ、この初めての発見の時は数千単位だったと思われ、その後これに匹敵する発生は見られていません。


 明正川にホタルが飛ぶことは以前より知られており、大阪自然環境保全協会堺観察グループによる観察会が開かれていました。しかし、第二豊田川にホタルが大量に発生することを発見したのは、91年6月のことでした。

ホタルの記憶

 鉢ケ峯の自然環境とゴルフ場問題を考える会が発足して以来、鉢ケ峯で催される観察会に私も同行するようになりました。

 それまでにホタルを見たことは、小学生時分に近所の幼友達がどこからとってきたのか、ホタルをかごに入れているのを見たことと、藤井寺市の道明寺で開かれた自然観察会に参加した記憶があるのですが、その時ははっきりとホタルを見た記憶が残っていません。

雨中の観察会
 そこで鉢ケ峯の観察会へは期待して行ったわけです。6月21日は雨でした。観察会は中止したのですが、集まったメンバー8人で鉢ケ峯へ行きました。予定通り明正川の川原へつき、ホタルを捜しましたが、なかなか見つかりません。8時を過ぎ、竹やぶの前をほのかに点滅しながら飛んでいるホタルを発見しました。

 ゆらりゆらりと飛ぶホタルはさびしげでしたが懐中電灯をちかちかさせたり、見えない暗闇のなかで目を凝らして捜した後だけに、みんな「おった、おった」などと大声をだし、盛り上がりました。結局、ここでは3〜4頭のヘイケボタルをを確認しました。

 その後、あるメンバーの発案で第二豊田川へ行くことになりました。雨の闇の中を「コナラのみち」と名づけた道を下っていきます。未舗装の苔が生えた道のまわりには笹が生え、コナラの大木が頭上を覆っています。

 明るいときに歩くと、メジロ、コゲラなどの野鳥がみられ、すばらしい雰囲気なのですが、真っ暗闇のなかではちょっと不気味で、何が出るかわからない、人間の本能的な防御本能をくすぐる道となります。わいわい言いながら元気付けして下りて行きました。
   
大発見だ〜!
 私が先頭を歩いていたのですが、川が見通せるあたりでたくさんの光を発見したのです。「いてるで−」おもわず声を上げました。

 そこには今まで見たことがない数のホタルが光っていたのです。みんなびっくりするやら驚くやら、うれしいやら完全に舞い上がっています。

 川の脇の木にはホタルがたくさんともり、ホタルツリーになっています。  川の中に生えているクレソンなどの葉陰にはホタルがじっとともり、点滅をくり返しています。

 そしてその点滅がある瞬間同時に光ったのです。数百ものホタルが一瞬光を合わせたことにわたしたちは単なる偶然を越えた何かを感じました。
 命の大切さ、自然の不思議さ、なにかそういう、遠くはるかなものと自分とがつながっているんだということを感じた一瞬でした。その夜は何万頭ものホタルがわずか300mの区間を飾っていました。ホタルの祭り.。
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 それからというものの毎夜の「コナラのみち」通いが続きました。翌週の29日に、再度観察会を開きました。生協組合員などに呼びかけ、当日集まったのは100人を越え、収拾がつかないほどでした。ホタルの数は前週に比べずいぶん減っていましたが、十分観察ができました。

残念だった今年の発生状況
 期待した今年、9 2年は5月末から7月はじめまで頻繁に訪れたのですが、残念ながら見られた数は少なく、多いときで30頭あまりでした。梅雨に入っても雨が少なかったこと、周辺の田んぼが休耕していることが影響しているのか、今後はどうなのか、とても心配です。

これまで確認したホタル

 ゲンジボタル 6月の早い時期に見られます。大型で前胸背板は淡赤色で黒い十字の紋がある。清流を好む。幼虫はカワニナを食べる。
 ヘイケボタル 6月半ば〜7月はじめに見られます。ゲンジボタルよりやや小さく、淡赤色の前胸背板中央に黒い縦筋。鉢ケ窒にはこれがいちばん多い。田んぼなどやや汚れた水にも発生します。
幼虫はヒメモノアラガイやカワニナなどを食べます。

陸生のホタル
ヘイケボタル、ゲンジボタルは幼虫は水中で生活しますが、日本で実際に目にすることができるホタル3 0種のうち、ヘイケ・ゲンジ以外は幼虫は陸に住みます。「コナラのみち」で笹やぶのなかで
光るホタルは陸棲のホタルの幼虫です。これまでに2種類の幼虫を確認していますが、葉の上に止まっていることと、幼虫の形態、生息範囲なとから、オオマドボタルとムネクリイロボタルではないかと思われます。(成虫未確認)


1992年11月8日に栂センタービルにて行なった集会「生物の眼から見た里山の自然環境」(主催・鉢ケ峯の自然環境とゴルフ場問題を考える会)資料より転載

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