個人山行報告書
<日程> 2013/6/8
<山域>御在所岳
<メンバー>三浦、百武、佐合、佐藤

<山行記録>
朝、私たちより一足先に御在所バットレスを知らない女性が、カリフォルニアドリーミングス5.10aをスイスイ〜スラスラ〜スラブを登り、
アブミを一段だけちょっと使ってウインドサーファー5.10bを登り切ってしまいました。
そのまま北面を懸垂下降で降りきて「3ピッチ目の花崗岩らしくて感触が気持ちがいいのよ!」と漏らしました。
いとも簡単にスラブをリードした女性に圧倒されました。
スラブの登りは力技じゃない。柔軟性とバランス感覚であることが証明された衝撃的な光景でした。

私は核心で、A0で身体を引きつければ登れました。
だから、しっかり腰を岩に引きつける姿勢を保てたらフリーでも登れるはずです。
しかしどうしても身体が岩から離れていてしまい足が滑ってしまいます。
百武さんはカンテを手で掴んで身体を引き寄せるようなムーブで足にフリクションと効かせる姿勢を取っていた。

(百武さんも滑ることがある)
カリフォルニアドリーミングスのルート5.10aはトカゲ5.11b/cのルートが隣に走っている。
その間は自由に登ればよいのであるが、百武さんは、カリフォルニアドリーミングスの途中からトカゲのルートに少し入りかけて、
最後にビレーをかけたほぼ同じ高さの斜面中央にトカゲのルート用のビレー点を見つけて「こんな所にランンングビレーを取る意味ないよね。」と独り言を言いながら、
バットレスの中央をトカゲルート寄りに登りっている!と思った瞬間に足を滑らせてザーという靴の擦れる音をたてて数メートル滑落して止まりました。
その時のビレーヤーは私です。トラバース中に2〜3mものザイルを繰り出していたのでその倍の距離を転落させてしまいました。
リードが落ちるのを見ながらザイルを握る手にテンションがかからない状態は不安になる。
1〜2秒間が過ぎて、最終ビレー点にひっかかってグアーンと確保器にテンションがかってやっと停止しました。
「タイヤのゴムが焦げる匂いがする。靴底がボロボロになっちゃった。残念!」と百武さんの声が聞こえてきました。
それでもまたしっかりとした足取りで終了点まで百武さんは立派に登り切ってしまいました。

(一ノ壁)
午後から一ノ壁に移動して、私はコンテストルート5.10aをセカンドで登らせてもらいました。
バットレスの5.10aと比べると、スタンス、ホールドがしっかりしているので同一の難易度だとはとても思えません。
唯一中間点のハング気味の所を抜ける核心通過だけは難しいのでこのグレードなのでしょう。
バットレスのような穏やかなスラブ面の登攀は、一の壁よりもはるかに総合的に難しい。
佐合さんは2ルートをリードで登って佐藤君を指導。佐藤君は御在所デビューでありながら、あっさりと登ってきた。立派なものだ。
百武さんは一日の最後に宇宙遊泳5.10bをトップロープで核心部を2回繰り返して練習をした。

一ノ壁には3ルンゼでアイスクライミングで会った青木さん夫婦も来ていました。
金沢の山岳会が数名も練習していました。金沢近くには御在所のように素晴らしいゲレンデはないそうで、250kmを自動車飛ばして泊まりがけでやってきたそうです。
名古屋に住んでいる私たちは、毎週でも日帰りで練習できるの地の利をうらやましがっていました。ほんとうに私たちは恵まれています。

(注意)バットレスで練習していると、地元の山岳会の方と思われる老練な方が中尾根の下山中に通りかかって
「トップロープを直接終了点に残置してあるカラビナに掛けて練習されると残置カラビナが削れてしまう。
終了点には自分のカラビナとスリングを使ってトップロープ用のアンカーを新しく作って練習して下さい。」と注意を受けました。

(実験)
東急ハンズで購入した「Stud Les Sole」というゴム板をクライミングシューズ(La Sportivaのタランチュラ)の足裏にゴム用の接着剤で貼付けてその性能を検討しました。
タイヤメーカーが開発した耐滑性にすぐれた特殊ゴムだという宣伝の説明書が入っているゴム板です。
これを張れば飛躍的にスラブが登り易いクライミングシューズに変身する設計です。
ビブラムソールのXエッジのゴムよりも柔らかい感触で、ファイブテンのC4ソールに似た性能で岩の凹凸に馴染んで摩擦力が飛躍的に高まること考えました。
実際に装着してクライミングシューズとしてバットレスで使ってみると、たしかに、岩に乗った時の摩擦力は高まっている体感がありました。
しかし細かいスタンスに立ちこもうとすると、エッジが柔らかいので、微妙に変形して「滑るのでなないか?」とう心理的な不安感を誘いました。
エッジング性能の低下と摩擦力の向上は二律背反の性質のようです。
La SportivaのTC—Proに履き替えて同じ斜面を登ってみると、Soleが固いので滑り易い感じもありましたがエッジング性能が高く安定感がある。
総合的に心理的にも安心して登れる印象を持ちました。
スラブでは常に足裏で広く面岩と捕らえるとは限りません。むしろ、小さなスタンスに爪先で立ちこむ場面の方が多い。
小さなスタンスに立ちこむためにはエッジング性能がもっとも重要です。
「Stud Les Sole」の総合判定は、それを張りつけたればスラブが夢のように簡単に登れるようになるわけではない、という当たり前の結論に達しました。

今回の解析から、ソールの周囲はエッジング性能の高いゴムで作り、中心分は柔らかめのゴムをはめ込んだハイブリッドソールの新しい開発アイディアを思い付きました。
同じ靴でも百武さんは登れて、自分は登れない現実を見てsoleの開発よりも、身のこなしを修得する方がはるに自分にとって重要な課題だと気がつくことができました。