個人山行報告書
<日程> 2013/3/16
<山域>御在所岳
<メンバー>三浦、福田、佐合、森山
<山行記録>
2月と3月に2回も谷筋を間違えてαルンゼ特有の氷瀑に会う事もなく稜線まで登り詰めてしまった。
このような失敗を繰り返さないために、今回は地形図の藤内小屋の標高を655mとして腕時計の高度計を補正して、
GPS情報と現地写真を照らし合わせながらαルンゼへの分岐点を慎重に確認した。
容易にαルンゼへの分岐点は確認できた。わかってしまえば簡単である。残念ながら氷瀑の最盛期は終っていた。
厳冬期ならば1ピッチ目のアイスクライミングが始まるαルンゼ最下部の氷瀑は融けてしまい、わずか数十センチの幅の氷が階段が残っていた。
幸いにも2ピッチ目で現れる巨岩に挟まれた二股の氷瀑から上のアイスの状態は良好で、アイスクライミングを楽しめた。
二股の氷瀑の前でザイルをしごいて登攀準備をしていると、一人で下からて草付きを登ってきた登山者があった。
その登山者は私たちの姿を見て「まだアイスクライミングができるんですね。僕はもうアイスは諦めて登攀道具を全部下に置いて来ました….。
」と言って悔しそうに私たちを見て、そのままアイスハンマーを片手に持っ草付きを登って行った。
その後はもう誰も登って来なかった。春の芽吹きが始まっている山でアイスクライミングを楽しもう、などと考える阿呆は我々だけで十分である。
100mほどの差でも、上部に行けば行くほど氷はしっかりしていて、気持ちがよかった。
3ピッチ目の氷瀑の上には30mほどしっかりした滑滝状のアイスが続いていた。
シゲさんにはその最後の30mのアイスだけを楽しんでもらった。
じつはシゲさんは最初の二股の氷瀑を登り始めた瞬間に大腿四頭筋のが痙攣で敗退し、草付きを一人で登ったのである。
私も登山中に下肢の痙攣を起こして困ったことがある。
なぜ痙攣発作が起こるのだろう?
(メカニズム)
残念ながら強い運動中の痙攣発作は医学的にそのメカニズムが完全に解明されている訳ではない。
どんなにトレーニングをしていても起こる時には起こる。(1) 局所の冷え、 (2)筋肉疲労、(3)脱水などによる血液・筋肉のイオンバランスの乱れなど
常識的な要因と関連があることは判っている。しかし完全に予防することは難しい。あまり着目されていないけれども、登山の呼吸法には注意するべきだろう。
運動負荷がかかると酸素を必要とするために心拍数が上がり呼吸数が生理的に増える。
意識的に深い呼吸に心がけないと、浅い頻回の呼吸になって、二酸化炭素を喪失する過呼吸の傾向になる。
浅い頻回の呼吸で二酸化炭素(CO2)を喪失すると血液の酸塩基平衡が崩れて血漿H+が低下する(呼吸性アルカローシス)。
H+の低下を補正するために赤血球中からH+が血漿中に供給される。赤血球中のH+低下を補正するために血清から赤血球中へK+が移動する。
その結果、血清K+が低下して脱力発作が起こる。呼吸性アルカローシスの同じ病態で低Ca血症も起こる。
低Ca血症は反射が亢進し、強直性痙攣、テタニーなどの身体症状を呈する。
(治療法)
呼吸性アルカローシスが運動中の痙攣発作の原因になっているならば、呼吸回数を意識的に減らして深呼吸に心がけることは有意義だ。
呼吸性アルカローシスを補正するために、二酸化炭素の吸入が有効であるから炭酸飲料も効果的だと思われる。
つまみにミネラルの豊富なナッツ、果物(Kの豊富なバナナ、Ca の豊富なイチジク)を食べれば低K血症、低Ca血症を補正できる。
シゲさんの、大腿四頭筋の痙攣発作のおかげで国見岳経由の下山は中止となり、山頂食堂で生ビールで宴会となった。
二酸化炭素を十分に摂取して、ゆっくり休憩できた効果で大腿四頭筋の痙攣発作もほぼ完璧に解消したようである。