個人山行報告書
<日程> 2013/1/13
<山域>豊田南山
<メンバー>山口、佐合、伊藤美、藤本、渡辺、三浦、鈴木(名古屋年金山岳会)


午前中に1本リードクライミングをし、昼食後は中段のテラスからのトップロープで3本練習をした。
朝は岩が冷たく手が凍えそうだったが、岩の上部には朝日が当たり汗をかくほど温かかった。
この日は笛による「猫語」と称するコールサインを試用してみた。
南山なら肉声でもよく届くが、笛の音はより明瞭に聞こえる。冬山や自然条件の厳しい場所で笛によるコールサインは役立つように思われた。

山口さんは「懸垂下降はもっとも危険な瞬間だ。」と言う。なぜならば初心者も誰からもビレーされていない状況になるからである。
熟達者によって安全を担保できない状況で初心者一人で一つでも操作を誤ると、それが事故に直結する可能性がある。

左ルートは南山女岩で一番易しいルート(III+)である。それでも私は南山での初めてのリードに緊張した。
手の届く限りビレー用のボルトに120 cmのスリングと60cmを使い分けて登った
。ザイルの左右への振り分け配慮して、終了点に無事到着した。
「さあ!アンカーを作ろう。」とした時に手持ちのシュリンゲとカラビナを全部使い切ってしまっていることに気がついた
。とんでもない失敗をしたものだ。「シュリンゲが全部無くなっちゃった!もう一本もない!」と終了点で叫んだ。
そこへちょうど山口さんと鈴木さんがゲレンデ前に車で到着して、私の叫び声に気が付いた
。巻き道を使って山口さんが終了点までシュリンゲとカラビナを2セットを届けに来て下さった。

私が岩から降りてくると、山口さんは「ザイル操作の手順がまだしっかり修得できていないみたいだから、登る所から懸垂下降が完了するまでの手順を確認しましょう。」と言った。
ザイルを組んだ3名で南山女岩の一番下段をトラバースしながらザイル操作を山口さんに確認してもらった。
地面からわずか30cm程度のトラバースである。しかし私は宙吊りでアンカーを作るのは初めてだった。
片手で安全環カラビナを開いてセルフビレーを取るのに難渋した。
伊藤美紀さんはセカンドで動き出してすぐ、低い所でアイゼンを滑らせて地面に足を着いた。
「何やってんの!そんないい加減な乗せ方をしていたら、いつまでたっても上手くならないよ!」山口さんの檄が飛んだ。


<終了点到着から懸垂下降まで>

1) 終了点でアンカーを作る。
リード登攀者は、終了点でシュリンゲとカラビナでアンカーを作る。

(注意1)
アンカーを作るためのシュリンゲと下降前のバックアップビレー用のシュリンゲの合計2本は終了点で必要になるので
ランニングビレーを設置すために使えるシュリンゲの数を計算しておく。

<必要な装備>
シュリンゲ 2
カラビナ2 (アンカー用)
安全環付きカラビナ1

2) リード登攀者は第一にメインロープでセルフビレーをとる。

(注意2)
衝撃荷重の大小が支点崩壊に直接的に関わるので、安全登攀の考え方からすれば、まず、メインのクライミングロープでセルフビレイを取ります。
この場合の取り方は、普通カラビナをリングやボルトにかけ、それにメインロープをインクノット(マスト結び・クロープヒッチ)で取ります。
そして、次にそのセルフビレイのPAS(パーソナルアンカーシステム)やスリング類などで取る。
つまり、バックアップ用としてシュリンゲを使うということになります。
PASはリング状のテープスリングを繋いでいるので、その各々リング状のスリングは約18 kNを保障されています。
PASは、レスキューなどでもデージーチェイン以上に利用価値が高いことになります。

3) リード登攀者は「完了」を宣言する。 笛「・-」

4) フォローは「了解」の返事をする。 笛「・-」

5) フォローはリードのビレーを解除する。(セルフビレーは解除しない。)

6) リード登攀者は、手袋を装着する。

7) リード登攀者は、ザイルを引き上げる。

8) リード登攀者は、フォローを確保するロープを確保器にセットする。
そのタイミングは「ロープいっぱい」の合図で受けてからでよい。
確保器にセット「したら登っていいですよ」の合図を送る。
笛「・- ・・」

(注意3:山口さんのヒント)
ザイルは引き上げる前に、確保器をアンカーに装着して、その後にザイルは引き上げることもできる。
しかし無駄な労力が必要とし、ザイルの引き上げに時間がかかる。
余分なザイルを先に引き上げてしまってから、確保器をセットする方が合理的である

<必要な装備>
安全環付きカラビナ2
確保器1

(自分の反省)
支点位置(確保器をセットする高さ)は自分の肩より十分に高く(または十分に後方に)セットする必要がある。
確保器の位置が自分の肩より低い(または手元にある)場合に、ザイルを真下に引き出すことは困難である。
もし確保器からザイルを斜めに引き出そうとる力が加わるとロックが効いてザイルが引き出せない。
確保器をセットしたら「登っていいですよ」の合図。 笛「・- ・・」

9) フォローは「登っていいですよ」の合図を受けてからセルフビレー解除する。その後で「登ります」の合図を送る。 笛「・- ・・」

10) フォローが終了点に到着する。
フォローで終了点に到着後、即座にシュリンゲに安全環カラビナを取り付けメインロープでインクノットでセルフをとる。

11) フォローで登ってきた人もザイルワークの準備のために手袋を装着する。

12) 確保器を回収する:
リード登攀者は確保器を回収して、懸垂下降する場合にはハーネスのビレー環に再装着する。

13) フォローはシュリンゲでバックアップビレーをセットする。
(シュリンゲはハーネスに直接タイオフで固定する。

(注意4:山口さんのヒント)
シュリンゲを通す場所はザイルを8の字で結ぶときと同じ場所を通す。
シュリンゲをビレー環にタイオフで連結させたり、カラビナを使ってビレー環に連結させると、ビレー環の回転で固定位置が決まらない。
カラビナを使って連結する方法もあるが、手元はザイルや確保器などで込み合っている。
もしもカラビナが開いる状態に気がつかないと大きな事故になる危険性がある。
だからバックアップビレーのシュリンゲは絶対確実な方法として、ハーネスに直接タイオフで固定する。

(注意5:山口さんのコメント)
登攀者全員がおなじシュリンゲにビレーをとるので、同じ所に何枚も安全環付きカラビナが重なって混み合った状態になるが、仕方ない。

14)フォローのインクノット(メインロープでのセルフビレー)を解除する。
シュリンゲによるバックアップのセルフビレーで確保している状態。

(注意6:阿部亮樹著「イラスト・クライミング」記述)
リードのメインロープでとったセルフビレーには「ザイルを確保する」意味がある。
ザイルは安全環付きカラビナにインクノットて固定されている限り落下することが予防できる。
リードのインクノットだけはザイルを投げ下ろすまで解除しない。

15)ザイルを振り分ける。
それぞれの1/2を首と両腕で振り分け、1/2を手で振り分けて2群に整理する。
2人で同時の速度で巻けば、絡まることはない。絡まるようならが、2本のザイルを別々に流してから振り分ける必要がある。

(自己反省)
どうしてもこのザイルの振り分けの段階でザイルが絡んでしまって準備時間がかかってしまい,時間をロスする。

16)ザイルを連結する
アンカーのリングを通過させて「2連のコマ結び」で連結させる。

(注意7)
連結させるザイルの端はリード側を使う。
リード側の端がアンカーにインクノットで確保されているので、近いリード側の二つのザイルの一つの端を終了点のリングに通して二本のザイルを結ぶのが合理的だ。 

17)ザイルを投げ下ろす。
「ザイルダウン」の合図で2本のザイルそれぞれ2群になるように、左右別々の手で持って、時間差をつけて下に投げる。
2群で時間差をつけて下に投げる理由は斜面の途中でザイルが団子にならないための工夫である。

(注意8:山岸尚将 著「教科書になかった登山術」のヒント)
実際の自然地形によっては、ザイルが途中の樹の枝に引っかかるなど、下降点まで落とせないトラブルが起こる。
トラブルが発生が予想される場合には、ザイルを投げ下ろす先入観を捨て、ロープバック・ロアーダウン・繰り出しなどの応用方法で切り抜ける。--------実践してみたい。

18)ザイルを確保していたインクノット(リードのセルフビレーを構成していた)を解除する。

19 ) 下降
確保器に二本のザイルを挿入セットする。
シュリンゲでバックアップビレーされていることを確認してから、ザイルに体重を掛けると確保器でしっかりとテンションがかかることを確認する。
右手で下降する側のザイル2本を持って腰に当てる。このときに左手が確保器に乗せてあると確保器に巻き込まれる危険性があるので注意する。
最終確認ができたら右手を離さずに、左手だけでシュリンゲのバックアップビレーを解除して邪魔にならないようにカラビナでハーネスなどに装着する。

(注意7:山口さんからのヒント)
下降する順番は熟達者がザイルが先に降りて、ザイルが途中でひっかかっているのを直し、下降点の安全確認をする。
最後に初心者は後から降りる。

20) ザイルの流れの確認
下降点に到着したら、引き下ろす側のザイルを引いて、引き下ろせることを確かめる。


猫語
冬山など厳しい自然情況では肉声が判別しにくい。肉声が届かないままザイルの動きを誤記して「完了」前にビレーを解除したり、
「登っていいよ」のコールサインなしに確保無しで登り始めてしまう可能性がある。
「完了」と「登っていいよ」は安全を担保する最も重要なコールサインである。
誰の声か識別できない場合にパーティを識別ができなくて困る。
パーティを識別させるために自分を「番号」で宣言するこが一つの解決策になるだろう。
「番号」だけで十分「完了」の意味を伝達することができる。応答の「了解」は復唱(オウム返しで確認できる。)

「完了」の次ぎにリードが出すコールサインは「登っていいよ」に決まっているので、これも「番号」だけでもよいかもしれない。
しかし「完了」のコールサインを2回くりかえして念を押して使った場合に、聞き手は2回目のコールサインを自動的に「登っていいよ」のサインだろうと判断する。
万が一のこの誤解をが成立してしまうと、確保できていない状態でセカンドが登り始める。
この誤解を避けるために「完了」と「登っていいよ」のコールサインを鑑別する工夫をする必要がある。
「登る・・」という動詞を付けることでこの誤解を解消できる。なお2班、3班については1班の主語を代えれば、同じ法則でコールサインを組み立てることができる。

基本単語
「主語」
1 ・-
2 ・・-
3 ・・・-

「動詞」 登る ・・

基本文法1:復唱(オウム返し)
基本文法2: 主語+動詞

用例
1班 完了(主語のみ) ・-
1班 了解(主語のみ) ・-

1班 登っていいよ(主語+動詞) ・- ・・
1班 登ります(主語+動詞) ・- ・・

2班 (以下同様) ・・-
3班 (以下同様) ・・・-

南山女岩 標高差35m 幅35m
○1 左ルート(III+)
○2 左IIルート(V) バンド上部が核心
○3 バンドルート(V)
○4 競技会ルート(VI)
○5 ダイレクトルート(V+)
○6 右ルート(III+) 初心者向け
○7 凹角ルート(IV+)
○8 スラブルート(V)
○9 スラブIIルート (V+)
○10 左上バンドルート(VI)
○11 右Iルート(IV+)
○12 右IIルート(IV)
○13 左トラバースルート(V)
○14 トラバースルート(IV