個人山行報告書
<日程> 2012/11/3
<山域>御在所前尾根P6〜P4
<メンバー>山口、山城、福田、三浦

<コースタイム>
名古屋(5:00)御在所裏道駐車場(6:30)テスト岩前尾根P7巻き道 P6(10:00)P5(10:49)P4(12:30) P4から懸垂下降で下山開始(14:45) 下山完了(18:00)
下山は日没後。

冬型の気圧配置で濃尾平野は晴れていた。しかし御在所の上空には雲が発生して太陽の姿はほとんど見えない「御在所天気」の寒い一日だった。
私は下着+中間フリース+フリース+雨具の4枚を重ねて着たがそれでもP4の吹きさらしは寒かった。
まずテスト岩でトップロープでアイゼン装着して岩を登る練習をしてから前尾根に取り付いた。
P7での順番待ちに時間がかかりそうだったので巻いてP6から登り始めた。

(学習事項)
立木への支点の取り方の基本:
1)太い生木
2)なるべく地面に近い所にシュリンゲをかける
3)可能なら流動分散で複数から支点を取る。

(注意1)2本のシュリンゲ同士はカラビナを介して接続する。
シュリンゲは摩擦融解に弱い。2本のシュリンゲをタイオフで直接繋げるた場合に、つなぎ目を痛める危険性がある。
シュリンゲ同士の連結は避けてカラビナを介することを原則とする。
接続には安全環付きカラビナ1枚または安全環の付いていないカラビナはゲートが表裏逆さになるようにして2枚セットで簡単にゲートが解放しないように配慮する。
(余談:シュリンゲに直接ザイルを通すのも危険で、ザイルが流れる時の摩擦熱でシュリンゲが融解切断される事故が起こっている。カラビナを介してザイルを通せば安全である。)

(注意2)シュリンゲの引き出し角度は90度:
引き出し側をまっすぐにすると、締まる力が働かないので空回りする可能性がある。
今回の御在所テスト岩の現場の状況判断で山口さんからは「引き出し角度が90度程度にする。」という指導を受けた。
引き出し角度をつけると引き出し部位でシュリンゲで立ち木を絞り込む力が出るので空回りが防げる。
この指導を受ける前に、私は引き出し側をまっすぐにセットした。
その理由は、引き出し側に角度を付けると、折れ曲がり点に力が集中するのでシュリンゲには縦方向の張力に加えて、
横方向に剪断する力が加わることになり、シュリンゲの耐荷重保証が横方向にも保証されているのか?心配になったのである。

(山口さんのコメント)
木にシュリンゲセットしたときの角度は90度と教えました。
「引き出し側をまっすぐにする。」のには個人的に疑問を感じます。
トップロープで登っている人が落ちたときに、シュリンゲが空回りする可能性があります。
その際、シュリンゲが木と擦れるのがいやだなーと感じます。また、通常トップロープで登るときは、トップロープ支点は見れません。
なので、しっかりした支点作りが大事かなと思います。

(注意3)シュリンゲの長さを調整してトップロープを掛ける
トップトープのザイルが流れる場所を想定して、岩のエッジにザイルがかからないように、シュリンゲの長さを調節して安全環付きのカラビナにザイル(トップロープ)を掛ける。

(注意4)セルフビレーのシュリンゲの長さの選択基準:
(山口さんのコメント)
シュリンゲの長さの決定は、支点によりけりです。支点3個で使用するときは、60cmだど流動分散角度が大きくなるため、120cmを使用します。
基本は
①支点のシュリンゲの長さは最小限に
②流動分散角度は60度以下

セカンドでリードをビレーヤーの役割を果たす状況では短い方の60cmシュリンゲでセフルブビレーをした(「シュリンゲの長さは最小限に」の基本)。
:リードが転落した場合にビレーヤーは確保器を介して強い衝撃力が働く。
この時にセフルブビレーのシュリンゲが長ければ衝撃力の方向に体が振られる自由度が大きくなる。
体が振られる状況によっては岩などにビレーヤー自身が衝突する危険性がある。
転落者にとっても、ビレーヤーの動きが大きいということは落下距離が大きいことを意味して危険性が増す。
したがって、ビレーヤーが動ける距離を短くするために、短いシュリンゲを使うのが基本になる。

懸垂下降によって下等点に到着した所でセルフビレーを120cmの長い方のシュリンゲに切り換えた。
どんな状況でも「シュリンゲの長さは最小限に」の基本には変わりはないが、4人が同じ場で作業をする必要があったために長い方の120cmシュリンゲに切り換えた。

(注意5)セルフビレーの交換手順:
セルフビレーを取る前に、私ははうっかりと懸垂下降の右手(制動)ザイルを離してしてしまった。
山口さんから「右手(制動)はザイルから絶対に離しちゃ駄目!」と即座に叱られた。
懸垂下降が連続する場面では、安全な最終下降点に到着するまでは、下降器の制動をする右手でザイルを握って確保しつつ、左手だけでセルフビレーを取る習慣をつける必要がある。
セルフビレーはハーネスに付けたシュリンゲによるビレーとハーネスに付けたザイルによる2系列でセルフビレーを取る。
2本のザイルでセルフビレーを取る場合は、2本のザイルの長さを揃え、インクノットの結び目の形もきちんと揃えて、きちんと固定されていることを引っ張って確認すること。

(注意6)セルフビレーのシュリンゲをタイオフでハーネスに固定する:
ハーネスの確保リングにシュリンゲをタイオフするのは楽であるが、確保リングに固定したシュリンゲは、確保リングにと一緒に動いてしまう。
シュリンゲを確保ザイルを通したように、直接ハーネスにタイオフで固定することにより、遊びを無くして固定できる。
登攀時には60cmのシュリンゲをタイオフしセルフビレー用の安全環付きカラビナを一つ通して準備しておけば、到達点ですぐにセルフビレーができる。


(注意7)アイゼンを装着した靴底の角度は約30度
靴底は水平よりもやや前に立てる感じでアイゼンの前爪2本だけに体重を乗せて靴底を約30度だけ前傾させて岩に立つ。
前爪2本+後爪2本の合計4本の爪に体重を乗せることも可能だ。
しかし後爪2本に体重が誤ってかかってしまうと後爪2本が支点になって「てこの原理」で前爪2本が岩から外れて落ちる。
ただし前爪2本に乗ることを意識し過ぎて、靴底の角度を45度以上にすると前爪が滑って落ちる危険性がある。
御在所の岩にはアイゼン爪の穴が空いているの45度以上でも前歯2本で立つことも可能であるが、
自然の岩壁や氷壁には、御在所のような穴はないので、適度な角度で岩にアイゼンの歯を乗せる配慮が必要である。

前尾根P6取り付き部の登り方(三浦の自己流)
この日はP7が混んでいたので、巻いてP6に取り付いた。P6を登り始めて2番目のビレー点を超えるのに私は苦労した。
クラックの左側の適当な位置にアイゼンの凹みが見えていた。
しかしそれはアイゼンの歯を乗せるには外側に丸くなって光っていたので、多くの人が滑った証拠で、アイゼンを乗せるスタンスとして使えないと判断した。
クラックの右側には明瞭な二つの凹みがあるので、そのスタンスを使って登ることが賢明だ。
しかし問題は右側のスタンスまでの高さが高杉て、私が乗り越す脚力の不足を感じた。
思い切ってビレー点から回収したカラビナとシュリンゲを再度セットして、右手A0で上半身を固定させて、
その明確なスタンスにアイゼンスタンスにアイゼンの前歯をきちんと入れたら登れた。

(注意8)シュリンゲの回収と整理
私は無我夢中で登りながら、回収したカラビナとシュリンゲを無造作に首に掛けただけで登った。
山口さんはだらしない私の姿を見て「もしも落ちた場合に首に下げてたままのシュリンゲは『首つり』の原因になる。
必ず肩にかけて整理しなさい。回収した場所が不安定だったら、安定した場所に立ったときに整理した方がいい。」と山口さんからの注意を受けた。
なお、ザイルを首に掛けて移動する際にチェストベルトを活用するときちんと纏められて安定する。


(注意10)溶接されたO型のリングの危険性:
アンカーボルトにセットされている O型のリングは懸垂下降には便利だ。静的荷重には充分に耐えられると思われるが耐荷重の保証はない。
落下時の大きな衝撃が加わると溶接部分が破壊される可能性がある。
このステンレス製のO型リングには何ら耐荷重表示がなく溶接部分の強度保証がない。
カラビナを掛けて確保支点として使っている人があるが、危険だ。ボルト自体の穴にカラビナをかけて確保支点とする必要がある。
岐阜県山岳会の確保訓練で注意が喚起されたのは多くの人が勘違いして、ステンレス製のO型リングを確保点として使っているのだろう。
御在所のゲレンデで兵庫県のある山岳会の人たちの確保支点の取り方を見たところ、この危険な確保の仕方をしていた。

(注意11) 懸垂下降の姿勢=半身で下降点を見る。
制動する右手は、右の腰辺りで操作する。初心者は両手を制動器に近過ぎる握る傾向がある。
充分に体重を制動器に委ねるようにして、右手はゆとりをもって腰あたりで下降速度を調節する。
体は真上を向いているのではなく、半身になって下降すべき位置と周囲の状況を確認しながら下降する。

(注意12) ザイルが振り子のように離れてしまう失敗の予防法
懸垂下降では必ずしも鉛直方向に降りるとは限らない。
地形的にアンカーの位置から相対的に鉛直方向から離れている地点に降りた場合に、ザイルは鉛直方向に垂れる力が作用する。
ザイルから手を離してしまうと、ザイルは重力によって鉛直方向に垂れて、自分の立っている場所から振り子のように離れていってしまう失敗を予防するために、
ザイルから手を話す前にザイルの末端または中間部を自分の体についているカラビナにインクノットでつないでザイルを確保しておく。

(注意13) 懸垂下降が一番危険:山口さんの独り言
山口さんは「懸垂下降が一番危ないんだよね。」と言った。本人以外に確保されていない状況が「危険である」という理由のようだ。
11月3日のトレーニングでは、そういう意味も含めて懸垂下降用のザイル以外に別のザイルをお互いのハーネスに8の字で結んで安全を確保して懸垂下降の訓練をした。
2本目のザイルは万が一初心者の私が予期しない方向に下降した場合に引き寄せたり、不慮の事故を起こした場合の念のために装着したものだろう。

(山口さんのコメント)
懸垂下降では、他の人の動きを見るように。人がする以上ミスがあるので、パーティー全体で危険を回避する必要があります。

(注意14) 懸垂下降の距離予想:
懸垂下降をする際に必要となるザイルの長さをあらかじめ知っておく必要がある。
今回はザイル一本を二つに折って懸垂下降するか、二本のザイルを繋いで懸垂下降するかの判断は、山口さんの指示に従ったけで済んだが、
実際のアルペンクライミングの現場では懸垂距離を正確に予想しておく必要がある。
なお、山口さんから「シューと早く降りて!マッターホルンでは懸垂下降が何本もあるのだから…」と指導された。。
懸垂下降の安定して早くできるように反復練習する課題が見えた。

(注意15) ストッックの収納
ストックをザックの外に付けておくと、岩に引っかかって落すことがある。ザック内に収納しておくべきだ。
小さいザックにはストッックを分解することで収納できるようになる。

(注意16) 足を決めたら動かさない:
私はテスト岩の練習中に一回足を滑らせて落ちた。「足の置き方がちょっと粗雑だ。」と山口さんから指摘されて反省した。 
アイゼンの前2本の爪を岩に乗せてスタンスを決めたら、そのアイゼンの角度や位置を動かさないように静かに体を動かすべきだ。
いい加減な気持ちで岩に乗ると滑り落ちる原因になる。
テスト岩で2回練習をした後に前尾根P6からP4までアイゼンを装着して登れたことは嬉しい。
ただし難しい所2カ所はA0で乗り切り必要があったことを懺悔しておく。

(注意17) 下降器にザイルをセットする:
下降器をカラビナから外してザイルをセットすると、誤って下降器を落下させてしまう原因になる。
下降器は常にカラビナに通したままでザイルの輪をカラビナに通せばセットできる。
下降器は常にカラビナと連結している状態だから落す心配がない。

(山口さんの総合的コメント)
山を登る以上、山岳事故は0になりません。ですが、限りなく0に近づけるようにしなければなりません。
何が危険か、何をする危険かを意識しながら行動する必要があるかと思います。
そのうち、頭で考えるのではなく、自分の見た目で判断できるかと思います。