夏山合宿山行報告書
<日程> 2012/8/11~14 前半組
<山域>北アルプス 真砂沢定着 源治郎尾根
<メンバー>鈴木、伊藤(聡)、佐合、伊藤(美)、福田、三浦

<コースタイム>
1日目:名古屋(21:30 中央高速道路)→立山駅 駐車場(翌日1:00)
2日目:立山駅 (8:20 立山ケーブルカー)→美女平(8:40 バス)→室堂(9:40)→雷鳥沢(11:00)→ 劔沢(14:00) →真砂沢キャンプ場BC(16:30)
2日目:BC(4:45)→源治郎尾根取り付き(6:20) →I峰(9:30) →II峰(11:00) →剱岳(2998m) (12:30着、13:00発) →池ノ谷乗り越し長次郎のコル(左俣へ)(13:39)
     →熊ノ岩の水場(14:34)→I-IIのコルへのルンゼ取り付き(15:08)→BC (16:00)
3日目:BC(4:15)→八ツ峰VI峰取り付きまで(7:00)雨で撤退 →BC (10:15)
4日目:BC(9:05)→雷鳥沢(13:00) →室堂 (13:56) →立山駅 駐車場(15:30)

<山行記録>
8月10日(金)曇り 午後9時半、猫屋敷を伊藤聡さんの車で伊藤(美)、コーヘイ、三浦が出発。佐合さんと福田さんは別の車で先に鳩吹山で集合して別途出発。

8月11日(土)晴れ

室堂の水場で給水をした。その場所に山と渓谷社の記者と名乗る2名が近くに寄ってきた。
「登山者アンケートをお願いしたい。」と言う。
山と渓谷社が発刊している山渓JOYの来年の記事にするために、加藤さんと小林さんという二人の記者が通りすがりの登山者に声を掛けて調査していたのである。
若い登山者のアンケートは沢山聞き取り調査ができたので、是非「おじさん」を代表して写真を撮らせて頂きたアンケートに協力していただけると有り難い、と言う。
私は確かに髭に白いものが見え始めた「おじさん」である。「おじいさん」と言われなかっただけよかった。
私は一人で登る予定ではなく、チーム猫屋敷という山岳会のメンバーとしての登山だから、写真は皆で一緒に撮ってもらうようにお願いして、快く取材を受けることにした。
質問「今回の目的は?」答え「真砂沢でベースキャンプを張り、定着型の登山で美味しいものを食べる。マッターホルン登山のクライミング練習をする。」などと説明ししながら荷作りをした。
水を入れるススペースを作り、そこへジャンボエスパースを詰め込むために、ザックの中味を順次整理していたら、中から缶ビール6本が飛び出してき。
「ああ、なるほど、最近流行している軽量登山とは全然違いますね。」と言って記者は私の話している言葉の意味を納得していた。
「今回の目的地は?」答え「剱岳。源治郎尾根と八ツ峰をクライミングで遊ぶ。」「次ぎの登山の計画は?」答え「北鎌尾根」。
「登山歴は?」「40年。ただしクライミングは今年からの新人。」という具体に質問に答えた。
今回取材された内容は、来年2013年山渓JOYの夏号に掲載される記事になるらしい。チーム猫屋敷の名前をきちんと記述してもらうようにお願いした。

劔沢診療所に立ち寄ったところ金沢大学医学部代謝内分泌学(第二内科)の橋本篤先生がちょうど到着された所で挨拶ができた。
金澤大学医学部は雷鳥沢にも診療所を持っていて劔沢には常駐している訳ではないらしい。
学生らも医学部学生ではなくテント場の管理をする他大学のアルバイト学生とのことである。

夕食:キノコ鍋:きしめん


8月12日(日)快晴 週
源治郎尾根:
間天気予報に反して快晴になった(天気図の推移は別紙参照)。
劔沢雪渓を登り返して、源次郎尾根取り付き点でハーネスを装着し、ピッケルとアイゼンをザックに格納し踏み跡を辿って登り始めた。

(第一の難所)最初の2〜3mの岩の所で先行していた東京農大の女子学生が乗り越えるのに苦労していた。
フリーではどうしても登れないと判断して先行して登っている仲間からザイルを出してもらいユマールを使って登ろうと努力していた。
上級生から「早く行けよ!」などと喝が入れられても登れないものは乗れない。「ザックを下ろして助けてあげたらいいのにね….。」と聡さんは呟いていた。
なかなか登れない状況が続いて、チーム猫屋敷6名の後から登ってきたパーティも順番待ちの列に加わった。
その難所を越えてから東京農大学生らは誤って右に折れてルンゼルート方向に登っていっている間に、我々は稜線ルートを真っすぐに登って大学生らを追い抜く形になった。

(第二難所)狭いゴルジュの入る前の岩に単純に登攀しようとしたが、私の登攀技術では滑り落ちてしまう。
一本のハーケンが打ってあった所に、伊藤聡さんにカラビナとシュリンゲを掛けてもらって、A0で克服した。
その後にハイマツの下をくぐるなどし、第I峰のピーク2709mに到達した。

(第三の難所)第II峰2770mから懸垂下降:ハイマツの尾根を登り、懸垂下降点に着くと、10名を越える順番待ちになっていた。
懸垂下降点には頑丈な鉄杭が打ち込まれ、さらに太い鉄の鎖が付けられているので安全に下降点をとることができた。
鉄の鎖に直接ザイルを二つに分けて通してザイルダウンした。下降距離は30m弱であるので、60mザイル一本でちょうど懸垂下降ができる。
下降点の狭い稜線から岩稜を登り詰め、剱岳の本峰2998mに到着した。到着時刻は12:30頃であった。
その頃までに私は2Lの水をすべて飲み尽くしてしまった。午後1時に山頂で全員の集合写真を撮影して下山を開始した。
池ノ谷乗り越し長次郎のコルから長次郎雪渓の左俣へ下り始めた上部には大きなシュルンドが口を開いていた。
その一部に雪の橋がかかっていたので、その上を一人ずつ越えた。熊の岩で水を補給して真砂沢まで下山した。

夕食:トマトスープ(しめじ、人参、キャベツ、ソーセージ、ベーコン)最後にアフファ米でリゾットにして食べた。じつに美味しい!


8月13日(月)晴れ後雷雨
八ツ峰VI峰のCフェイス剣稜会ルート:
八ツ峰上半分の縦走をする予定で、BCを午前4時15分に出発して長次郎雪渓を登った。
VI峰取り付きに到着してまもなく本降りの雨になった。岩穴の前で暫くツエルトを冠って雨の止むのを待っていたけれども、先行パーティも撤退を始めた。
我々はハーケンを打つ練習をしただけで登攀は中止して撤退した。
午前10時半にBCに戻った時には、伊藤美紀さんは朝から体調不良で長次郎雪渓の分岐からBCに一人で戻ってBCで待っていた。
静かに寝かせてあげたいところであったが、隣で残りの5名はトランプに興じて騒いでしまった。夕方から雷雨になってテントを叩く雨音が凄まじい。

夕食:各自で用意したビバーク食(ジフィーズ類)+スープ(タマネギ・ジャガイモ・人参スープ)。
8月13日は小生の満58歳の誕生日に当たる。その祝いのためにデザートはロールケーキと5と8の形になっているロウソクが用意されていた。
小生は抹茶立てて皆に飲んでもらった。雨音がどんどん大きくなって土砂降りになってきた。
余興に妙な音を出しても近所迷惑にならないだろうと思って、ちょっとハーモニカを吹かせてもらった。


8月14日(火)夜明けまで土砂降り。
雨のために本日も登攀は無理。1日早く下山することにした。
午前9時に一次的に雨が止んでいる間に真砂沢キャンプ場を全員で出発した。
伊藤(聡)、佐合、伊藤(美)、三浦の4名は当然名古屋に帰るために下山するのであるが、コーヘイ、福田の2名は後半の合宿が続くところ、本日は「みくりが池温泉」に入る目的と、間違って他者が持ち去ってしまったビールを室堂で買い出しをする二つの目的でいっしょに室堂に向かうことになった。
劔沢の雪渓の上は本降りの雨だったが、劔御前を乗り越しから雷鳥沢側は雨が降っていない。
雲が切れて雷鳥沢キャンプ場の色とりどりのテントが見える。稜線を隔ててまったく天気が違っていた。

グランドサンピア立山(粟巣野温泉)で汗を流して、帰路に着いた。




(注意点1)落石
源治郎尾根は比較的岩がしっかりしていると言われている。しかし、バリエーションルートと言われるだけあって、一般ルートと比べると遥かに危険を感じた。
崩れ始めている場所を通過するときには、充分に静かに足を置いたとしても、足の動きの振動が握りこぶし大の落石を誘発する可能性が非常に高い。
事実、先行した大学生らは、何回も落石を起こしながら、「危ない」と感じさせられた。
幸いにもチーム猫屋敷のメンバーは落石の加害者にも被害者にもならなかった。しかしいつ事件が起こっても不思議ではない。
バリエーションルートかなり危険な場所だと思う。自分が掴んだ大きな岩がグラッと動いて抜けそうになった時は焦った。
しかしなんとか落石にならないように元の場所に手で押さえて戻し、別の岩に手をかけて登った。
しかし近い将来、あのような不安定な岩は必ず崩れるだろう。その瞬間に遭遇すると事故になるのだろう。
この微妙で不安定な岩場をどのように早く、かつ安全に通過するかがバリエーションルートを楽しむ一つの重要は課題だと思う。

(注意点2)天候
名古屋を出る時点で、週間天気予報で雨が続くことが予想されていた。
初日と翌日はその予想に反して晴天になって素晴らしい源次郎尾根歩きを楽しむことができたが、3日目以後は断続的な雨になり、とてもクライミングができる状態ではなかった。
土砂降りの中で、ジャンボエスパースのフライの張り方が甘かったようで、部分的に雨漏りに困った。