個人山行報告書
<日程> 2012/3/20
<山域>御嶽山系・阿寺山地 小秀山
<メンバー>佐合、山口、三浦

<コースタイム>
1日目:名古屋(16:00)→鳩吹台(17:15)→乙女渓谷キャンプ場(19:00)
2日目:乙女渓谷キャンプ場(6:38)→夫婦滝(7:55)→三の谷分岐(10:28)→兜岩(11:09着、昼食、12:00発)→森林管理小屋(13:58)→乙女渓谷キャンプ場(14:37)

<山行記録>
3月19日(月)快晴

午後5時、佐合さんの運転で乙女渓谷キャンプ場へ向かった。現地には午後7時ごろに到着して幕営。砂利の駐車場には私たちの車1台だけ。
満天の星の輝きの下で、ビールを飲みながらガソリンストーブ(SVEA)を燃やして、サラミソーセージ、シシャモ、アーモンドを炙っりつつテントの外で楽しい時間を過ごした。

3月20日(火)快晴

午前5時起床。気温はマイナス5℃以下(車中のポカリスエットがシャーベット状に結晶し始める温度)。
午前6時半、床乙女渓谷キャンプ場(標高868m)の中央管理棟の建物の横から加子母(かしも)川に架かる橋を渡って、二ノ谷口登山道を歩き始める。
ここから夫婦滝(標高1250m)までよく整備されている谷川沿いの木造の遊歩道である。夫婦滝は落差80mの立派な1対の滝で、部分的に青い氷瀑として凍結していた。
山口さんはアイスクライミングのことを考えながら眺めている様子だった。夫婦滝の先に小滝と孫滝があり、孫滝がルート上の最終水場となる。
そこから谷筋を離れて稜線を登り始める。やっかいなことに登山道は所々透明な氷が張りつめていた。
佐合さんが先頭で注意深く氷面を避けながら登る。次ぎに私が続いて、後ろから山口さんに足場の取り方などの指導を受けた。
凍結している場所が多いので私が登攀に難渋したので夫婦滝から兜岩まで2時間33分(標準コースタイムは1時間50分)を要した。
アイゼンもピッケルも使わずに兜岩まで無事登ることができたのは、佐合さんと山口さんのご指導の賜物である。
固い雪面へのキックステップは、私の技術では1回の蹴り込みで充分な足場を作ることができずに2〜3回蹴り込むことが多かった。
上手なキックステップ技術を会得することは体力の消耗を抑えて登攀スピードを上げるために大切な技術だと感じた。

午前11時9分に巨石の兜岩(標高1880m)の上に到着した。御岳と白山の素晴らしい眺望に感嘆した。
風景にすっかり満足して本日の登りはここ打ち切りとして小秀山の頂上まで進まないことに決めた。
兜岩の巨石の上で佐合さんがガスストーブ(Jet-Boil)を出して湯を湧かして下さったおかげで温かい昼ご飯を食べることができた。
とても幸せな兜岩の上の50分間であった。

下山:12時にアイゼンを装着してピッケルを握って下山を開始した。
アイゼンを装着すると安心感が湧く。やや急な雪斜面でクライムダウンの練習をした。三の谷の分岐点から朝とは別の下山ルートを辿った。
標高1600〜1500mの樹林帯に入ると傾斜が緩くなり、雪は適当に表面がクラストしてとても歩き易い。
トレースを歩くのは面倒だから、遠くにぶら下がっている赤いリボンを目標に一気に雪面を下って楽しんだ。
森林管理小屋手前でみつけた「熊へ、人間に気を付けて!」という看板といっしょに「人間=山口さん」の手配写真を撮った。
「秀宝水」という水場に到着(午後2時9分)。山口さんはご奥様へのお土産としてコーヒー用の水を水飛沫を浴びながら汲んでいた。
飛び散った水は周囲の木々の枝で凍結しているほど空気も水も冷たい。乙女渓谷キャンプ場に到着 (午後2時37分下山完了)。
岐阜県ドクターヘリ臨時離着陸場(中津川消防本部)のまん中にキャンプファイアーの形跡があるので、どうなっているの?と思ったら別の看板にはキャンプファイヤー場と表示されていた。
駐車場に戻って充分に時間があったので、テントとフライを広げて乾かした。
下山すると、山口さんも佐合さんも「今日はまったく汗もかきませんでしたね。」と会話していた。

<全体を通して>
私(三浦)がチーム猫屋敷のメンバーとして初めて参加した山行である。
日常生活の歩行動作では両足を平行に、右足は右側、左足は左側を前後に平行に動かすのが普通で、突然に足を交差させ、大股を開く動作は想像できない。
しかし山道ではそのような大胆な足さばきが臨機応変に必要になることがなかなか楽しい。「これは岩登りの応用です」と山口さんは言う。
私は下山後に適度な疲労感があった。広背筋や上腕三頭筋の疲労感は、ストックの突き方や登りで岩を掴む姿勢でエネルギーを消費したことが原因だろう。
腓腹筋やヒラメ筋の疲労感はキックステップの技術不足から足への負荷が大きかったのだろう、と自己分析した。
小秀山は夫婦滝までは遊歩道(木道)が設置されて誰でも気軽に楽しめる。
兜岩まではかなりの急登であるが、それを登り切ると御岳や白山の素晴らしい展望を開ける。二百名山として選ばれた所以が理解できる。

<今回の山行で私が学習した内容・備忘録>
1)読図の練習(稜線の記入)
山行前の勉強会で1/25000の地図を読みながら稜線をマーカ–ペンで書き入れる準備を山口さんから教わった。
山道で山口さんは休憩ごとに地図を広げて周囲を見渡して現在地を確かめている。
その際にあらかじめマーカ–ペンで書き入れた稜線が読図の参考になる。
私は国土地理院の地図をミウラ折り(三浦公亮:東大名誉教授が考案)にして、その折目が西偏角7度に一致させてあるのでシルバコンパスを正確に北方向に向けられる準備も整えておいた。
読図は本来自分の現在地を推定する目的があるが、必然的に遠方に見える峰々の名前まで把握できる。
読図による現在地の同定精度は1/25000の地図上で1mm〜2mmの範囲で同定できるので実際の誤差は4m〜8mの範囲である。
尚、腕時計の高度計を正しくセットしておけば高度だけでもかなり厳密にルート上で現在地を同定することができる。
万が一の遭難連絡時に高度情報を伝えることは遭難地点を知らせる意味で非常に役に立つだろう。

2)歩き方(オポジション)
二の沢ルートの登山道は部分的に氷結していた。むやみに氷上に足を乗せると滑って危険だ。
私は佐合さんが危険個所を上手に迂回(トラバース)するステップを後から追えばよいのだが、慣れないと案外通過に時間がかる。
私が登るのを躊躇していた所で、山口さんから大きく左右に足を開く「オポジション」の登攀テクニックを習った。
別の場所では「足をクロスさせる」動きも習った。日常生活の歩行中に「足をクロスさせる」動作は絶対に出てこない。
岩登りではカウンターバランスで体を支える姿勢(インサイド・フラッキング、アウロサイド・グラッキング)はごく一般的に使われるらしい。

3)歩き方(クライムダウン)
クライムダウンの練習時に、私はピッケルを自分の目前に打ち込んでしまう傾向を指摘された。
目の前に打ち込むと体を下降させると手が上の方に伸び切って、円滑に下降できない。
意識的にピッケルを足元に近い下方に打ち込むと下降しやすいことを教わった。
なお不用意に体の向きを変えるのは危険だ。
クライムダウンの姿勢に入る場所は急斜面であるので、第一にピッケルのシャフトを雪面に打ち込んで体を確保してから、第二に体の向きを変えることを学んだ。
何気ない「体の向きを変える」という動作を起こす前にも、「安全確保」という登山で最も重要な要素を学んだことは非常に勉強になった。

4)岩の安定性の確認:
岩は安定して固定されているとは限らない。掴んだ岩がと突然剥がれ落ちると事故になる危険性が高い。
体重を掛ける前に手で押して全く動かない安定した岩であることを確かめてから、その岩に体重を掛けるべきだ、との指導を受けた。

5)ストック選択の失敗:
私がダブルストックは、軽量であればあるほどよいと思って今回の山行きのためにコンパクト フォールディングポール(モンベル製)を新調した。
ただしポールの長さは変更できないので、グリップする位置をストラップの長さだけで調節する必要がある。
使ってみると長いままのポールは急斜面では大変使いにくいことが分かり登山道具としてはちょっとお勧めできない。

6)登山用品の紹介(ランタン)
● UCO(ユーコ)キャンドルランタン(アルミ製):ローソクをテントの中で使う場合に裸火でない方が安全性が高い。耐風性があり屋外でも使える。
● ガソリンストーブ:
OPTIMUS 123R SVEA(スベア):スエーデンSvea社製の100年近く前の旧式デザインをOPTIMUS社がそのまま復刻して生産を引き継いでいる。
火力は回転式コックで微調節が可能。ポンピング装置がないために火力は最新型のガソリンストーブには及ばない。
ただし単純な構造で故障が起き難い。大きな炎が立ち上がる心配がないメリットがある。