個人山行報告書
<日程> 2010年9月17日~20日
<山域> 南アルプス 北岳バッドレス
<メンバー>伊藤(聡)、百武、佐々木
9月17日(金)
(移動日)猫屋敷(21:15)⇒芦安温泉駐車場(0:45)
順調に車を走らせ芦安温泉へ。 駐車場でテントを張るスペースを探して少しウロチョロ。
9月 18日(土) 晴れ
芦安温泉駐車場(6:40)⇒広河原(7:15~7:45)→白根御池テン場(10:15~11:20)→下部岩壁(13:20~14:15)→白根御池テン場(15:30)
朝一のバスに乗るパーティの遠慮の無い大声で一度目覚めるも、本日は急ぐ行程でもなし、強引に再睡眠。
広河原へは乗合タクシーを使用。 バス片道1100円に対し1200円かかるが、随時発着しており、広河原までの時間もバス1時間に対し40分程度で便利。
ほとんどの登山者が二俣に向うが、我々は白根御池に向け急登を進む。
白根御池のテン場はテントスペースを探すのが大変な程混雑していた。
テン場の受付の際に小屋の方から、「大渋滞になるよ~。 来る人来る人、明日はバットレスに行くと言うんだけど、最後のパーティは何時帰営になるのか見当がつかないなあ。」
と脅される。
テント設営後、とにかく下部岩壁に向かう。 C沢の左岸を進んでBガリー大滝下に到着。 Bガリー大滝を3人パーティがノーザイルで登っている。
ザレたガリーを強引に横断し、Dガリー側に移動。 本日遊ぼうと計画していた十字クラックには先客がおり、まだまだ時間がかかりそう。
Dガリー大滝・五尾根支稜の取付には複数のパーティが順番待ち。 四尾根を目指す場合にも、こちらから取付くパーティがいるようだ。
ピラミッドフェースの取付を確認しようとも考えていたのだが、それもままならない。あきらめてテン場に帰ることにする。
下りは、明日の朝素直にDガリーに到達できるようにC沢右岸を下る。
帰営してみると、出発時よりも更にテントの数が増えていた。
明日のルートは打合せの結果、下部フランケ~Dガリー奥壁に変更することになる。
計画ではピラミッドフェース~四尾根~中央稜を考えていたが、ムチャ混みするであろう四尾根に絡まないよう考えた結果だ。
百武さんご用達、肉たっぷりの塩ちゃんこをたらふくいただき就寝。
9月 19日(日) 晴れ
白根御池テン場(2:30~3:35)→五尾根支稜取付(5:15~5:50)→下部フランケ取付(6:55~7:45)→Dガリー奥壁取付(11:00~11:30)
→終了点(14:10~14:40)→北岳頂上(15:05~15:30)→白根御池テン場(17:00)
夜中にワイワイ騒がしく準備するパーティに睡眠を邪魔されるも無視。
2:30起床。 すでにあちらこちらで炊事の気配。 3:35ヘッデンを点けて出発。 二俣から先は見通しがきくため、前後に多くのパーティがいるのがわかる。
下見のおかげでたいして迷うこともなく下部岩壁取付へ。
下部岩壁は五尾根支稜を登る。 昨日の偵察時の状況ではDガリー大滝は落石が激しく、登る気になれない。
ガイドに載っている五尾根支稜の取付はDガリー大滝取付と同じ場所である。
しかし1ピッチ目終了点まではⅢ級の登りでどこからでも登れるため、あらゆる場所から登りはじめている。 五尾根支稜と下部フランケは、聡さんリード。
1ピッチ目。 バンドのトラバース。 終了点で渋滞。
2ピッチ目。 リッジを登り緩傾斜帯へ。
右方向にピラミッドフェース・四尾根へと続くバンドが確認できる。
その左の凹角ぽいスラブを1ピッチ登れば下部フランケの取付なのだが、混雑しているため一番左側のDガリーを登って巻く。
下部フランケ取付では男1人女2人の中高年パーティが今から登り始めるところだった。
女性は初心者と初級者のようだが、男性は10aの1ピッチ目のスラブをフリーで難無く登っていった。
コースの概要も熟知しているようではあったがたいしたものだ。 あっぱれ!中高年の星パーティ。 我々はここをA0でクリア。
後続は京都から来た20代女性2人組。 つるべで登ってくる。 たいしたものだ。 あっぱれ!京都女性パーティ。
2ピッチ目。 出だしで左に迂回するところが少々微妙だが問題なく通過。
3・4ピッチ目。 おおむね凹角を行く。 4ピッチ目のハングを左に迂回するところが少々微妙だがこれも問題なく通過。
5ピッチ目。 ピラミッドフェース・四尾根に繋がるルートが右に分岐している。 ピラミッドフェースを登ってきたパーティの姿が予想以上に近くに見える。
下部フランケのルートはスラブを左上。 最初の1歩のフリクションが信用できず不安。
ここで下部フランケは終了。DガリーへⅡ級のトラバースなのだが、失敗は許されない高度なのでザイルを伸ばす。
最後の5mの草付きクライムダウンがいやらしい。 Dガリーを1ピッチ分コンテで進み、Dガリー奥壁取付へ。
ちょうど先行の“あっぱれハイスターズ”のラストが登り始めるところだった。
「むり~、登れな~い!」「どんなことしてでも登ってこ~い」のやりとりをしていたが、A0の要領がわかってきたのか、なんとか3段ハングをクリア。
その間にも後続の“あっぱれドスエシスターズ”はトラバースを終え、取付まで迫ってきた。 Dガリー奥壁は佐々木リード。
1ピッチ目。 核心の3段ハング。 1段目2段目とクリアするが3段目のお助け紐の誘惑に絡めとられ、後で後悔することになる。
ハングの後はクラック。 終了間際でロープが重いので下を見るとロープが3段目ハング角のクラックに挟まれロックされている。
確保支点まであと1m手が届かず、“あっぱれハイスターズ”の方にお願いして支点にシュリンゲをセットしていただいた。
更にシュリンゲを腰の高さまで3本連結し、片方のロープをシュリンゲに固定して、プルージックで下降。
なんとかロックを解除して登り返した。
確保支点では“あっぱれハイスターズ”のラストの方が、支点に2つシュリンゲをセットしたがために回収がうまくゆかず待っていてくださった。 申し訳ありませんでした。
2ピッチ目。 赤いツルツルの岩に走ったクラックを登る。 一部クラックが大きく開いている箇所があり、カムの3番が活躍。
後続の“あっぱれドスエシスターズ”は3番を携帯しておらず精神的につらかったもよう。
3ピッチ目。 凹角ぽいスラブからチムニー。 チムニーが狭く佐々木としては不快。
4ピッチ目。 チムニーを登って登攀終了。 靴脱場までコンテで進む。
頂上で健闘を称え握手。 しばしまったりとした後、写真撮影をして下山。
本日の夕食はパスタ。 お腹いっぱいいただいた。
明日の登攀予定を打合せたが、最終バスの時刻・登攀ルートの選択・本日の登攀による疲れ等を考え併せ、そのまま下山に決定。 疲れもあり、早めに就寝。
夜中に複数の足音で目覚めた。 「おかえり~。 お疲れ様。」の声。 時計を見ると 23時。
本日の最終パーティか? 暗い中での登攀になったのだろうか? 恐ろしや。
9月 20日(月) 晴れ
白根御池テン場(8:00)→広河原(9:40)⇒芦安温泉駐車場(10:20)⇒猫屋敷(15:50)
早く寝たので、いやでも早く目覚めると思っていたが、疲れているためか明るくなってから起き出す。
ゆったり準備、ゆったり下山。 風呂・昼食をすませ、明るいうちに猫着。
本山行で個人的に感じた事。
Dガリー奥壁は3年前に計画していたものの、ガスの中(言い訳)下部フランケの最終ピッチでピラミッドフェース方向にルートミスをしてしまい、ずっと宿題となっていたルートであった。
今回、自分が何処でミスったのかもわかり、念願の登攀を終えることができて充実感がある。 3段目ハングのチョンボは少々悔しいが。
ピラミッドフェース・中央稜が登れず残念であるが、次の宿題としていつか登りたいと思う。
それにしても、北岳バットレスの登攀は、交通機関の問題が絡み、非常に時間的にロスが多い。
自分の体力が急激に落ちてきているのを実感した山行になってしまった。
2日目、テン場に戻ってからの脱力感は今までに体験したことがなかった。
いつまでも遊べる体力を維持できるよう、精進、精進。