個人山行報告書

<日程> 2009/8/13~16
<山域> 北アルプス 剣岳 六峰Dフェース富山大ルート・チンネ左稜線
<メンバー> 伊藤 聡、佐々木
<記録> 佐々木

<行動記録>
8月12日(水)
(移動日)桑名20:45⇒立山IC 0:00⇒立山駅1:00

佐々木の都合で桑名起点にしていただく。 立山方面縦走予定のかつお君も桑名駅で合流。
ETC千円期間に入る13日になったところで立山ICを出る。


8月13日(木) 雨
立山駅6:00⇒室堂7:30~8:00→剣御前小屋10:00~10:30→長次郎谷出合12:30→   熊ノ岩T.S.14:30

天気予報が悪いことが影響しているのであろう、観光客が意外と少ない。 
室堂に着く頃から雨。 ゆうつ。 今年は雪が少ないようで、雪渓が痩せている。 
長次郎谷では雪渓が1か所途切れており、迂回する。 
ガスであまり視界がきかない中、やっと“熊の岩” が見えてきた。 
ルンゼで水を汲んだ後、そのルンゼを登りテン場ヘ。 
実は、もう少し長次郎谷をつめれば、歩いてテン場に到達できたのだが、ガスっていてその時はわからなかった。

さっそくテントを張り逃げ込む。 ストーブを点火し衣類を乾かそうとするが、外からの湿気もあり大きな効果はない。 
酒を飲みながら雨がやむのを待つがやまず、食事をしながら待つがやまず、寝ながら待つがやまなかった。 
ずぼん・パンツが濡れていて気持ち悪い。 雨がやんだのは夜中だろうか?


8月14日(金) 晴
熊ノ岩T.S.5:00~6:00→富山大ルート取付7:00~7:30→終了点11:15~12:00→ 5・6のコル13:45→熊ノ岩T.S.14:00

岩が乾かなくては登れないとの考えで、明るくなってから起き出す。 快晴。 
八峰・源次郎の鋭角的な尾根筋・豊富な雪渓の白さが剣の奥懐に入山している実感を与えてくれる。 

長次郎雪渓を渡った所にアイゼンとストックをデポ。 Dフェース前はシュルンドの開いた雪渓があり、迂回して取付へ。 

1ピッチ目。 佐々木リードでスタート。 以降、つるべで登攀。 終了点手前が少々登り方を考えさせられるが、問題なく終了。
2ピッチ目。 目の前の凹角内は濡れており支点も見当たらない。 右方向の1段上に支点が要所に見える。 
そちらにルートをとるが、核心の垂壁も見当たらず明瞭な終了点もない。 はい松を確保支点にする。 
山行後改めてトポを見ると、濡れていた凹角が本来のルートであったような気がする。
3ピッチ目。 左にトラバース後、カンテを直上。 次第にブッシュを登るようになる。
右に支点が有るのだが、ツルツルのスラブに水が流れており、支点まで行く気になれない。 
そのままブッシュの中を登り、はい松で確保。 セカンドが登攀途中に“ア~”と大きな声。 
滑落と思い身構えたがロープにテンション無し。 
下方を見ると、一抱えもある岩が落下してゆき岩壁に当たり砕け、下のパーティ(5~6人はいそう)に雨あられと落ちてゆく。 
まるでCGを見ているようにくっきり明瞭な映像。 ラーク、ラークの声。 ガンガーン、ゴロゴロと恐ろしい音。 
静かになってから伊藤さんが“大丈夫ですか~”と声を掛けるが明瞭な返事はなし。 どうやら大事にはなっていない様子。 
確かめて動かないと判断した岩が突然はがれたとのこと。 
佐々木がルートをはずしたことが、遠因となったと思う。 本来のルートは右でもなく、もっと左に回りこんだ所から直上するようだ。 
本来のルートだと疑いもなく登り始めたため、左の状況がどうだったか思い出せない。
4ピッチ目。 ブッシュの中のルンゼ状を直上。 本来のルートに戻り確保。
5ピッチ目。 6ピッチ目。 簡単なリッジを登りルートの終了点へ。
下降間際に後続パーティが登ってきた。 兵庫労山の方達で4パーティ登っているそうだ。 
怪我らしいものはなかったようだ。 丁重におわびを言っておいた。
5・6のコルへの下降は、他パーティは全て全箇所クライムダウン。 
我々は懸垂2回、ザイルトラバース1回を交えて下降。 
他パーティは、それだけの力量があるのか?大胆なのか?無謀なのか?前回も大丈夫だったという根拠のない実績か?
帰営後、濡れた装備をテント周囲に広げると、あっという間にカラカラに乾いた。 今晩は気持ちよく寝られそうだ。
隣のテントの方から、今日チンネで滑落事故が発生したことを知らされる。1人死亡、1人重体。 テンション下がっちゃうわ。
熊ノ岩は、ロケーション良く・日当たり良く・水場も近く豊富と、言うことなし。 最高。



8月15日(土) 晴
熊ノ岩T.S.2:30~3:30→池ノ谷乗越4:30→三ノ窓5:30→チンネ左稜線取付6:30→チンネの頭(終了点)13:15→三ノ窓経由池ノ谷乗越15:30→熊ノ岩T.S.16:15

暗いうちに出発。 他のテントはゆっくりしており動く気配なし。 
長次郎雪渓の上部はそこそこ急勾配。 池ノ谷乗越しで薄っすら明るくなってきた。 しっかり明るくなるまで休憩。 
ガリーは、いやらしいガラ場で落石に注意しながら下る。 
三ノ窓にはテントが4張。 すでに左稜線を登攀中のパーティが3、今から取付に向かうパーティが1。 
彼らも昨日は遭難騒ぎでテンションが下がり、本日の登攀にしたそうだ。 
三ノ窓にアイゼンとストックをデポ。 取付手前には岩と雪渓の間を突っ張りで渡っていく箇所があり、少々いやらしかった。

1ピッチ目。 伊藤リード。 以降つるべで登攀。 Ⅲ級にしては難しいか。
2ピッチ目。 難しくはないが、モーレツなランナウト。
3ピッチ目。 ピナクル基部まで。
4ピッチ目。 ピナクルを超えた硬いフェースを気持ちよく超えて岩塔で確保。
5ピッチ目。 リッジを渡り岩壁基部へ。
6ピッチ目。 7ピッチ目。 ややもろい簡単なフェースを直上。
8ピッチ目。 トラバース後、チムニーを直上。 チムニー部分が少々難しいが、面白いムーブを体験できた。
9ピッチ目。 核心のピッチ。 ここで順番待ち。 
前の3人パーティの様子を見ると、リードは核心こそ慎重に時間をかけていたが、他はグイグイとハイスピード、
2番手は初心者のようでA0を交えて登り、3番手はなんと登山靴でフリーで超えていった。 
全ピッチ通して、2人の我々よりも格段にスピードがあった。 脱帽。 さて、自分で登ってみて、変化のあるたのしいピッチであった。
10、11、12,13ピッチ目。 リッジ、ピナクル、リッジ、ピナクルと超えていく高度感のある登攀が続きチンネの頭へ。
頭でガッチリと握手。

三ノ窓の頭との鞍部からの下降は途中にある懸垂支点を利用し、50m懸垂でガリーまで。 デポを回収後、池ノ谷乗越へ。 
乗越から急な雪壁を下降。 岩の側はシュルンドがパックリと開いており緊張させられる。
佐々木のバランスの悪いカニ歩きでは聡さんからどんどん遅れていく。 
勾配も少し緩くなり、シュルンドも無くなった所で、アイゼンの歯12本全てを雪面に付けて前向に降りる練習を実施。 
ツルン、アラ!シマッタ!体が雪に接した瞬間からモーレツに加速していき、顔面に雪を被り状況がうまく把握できない。 
雪渓端部の岩砂利に乗揚げ、これで止まるかと思ったが、勢いが強く、またまた雪面を滑降。 
やっと滑落停止体制にもっていったもののアイスハンマーのピックでは思うように制動が利かず、再び岩砂利に乗揚げ、やっと停止。 
体の損傷状態をチェック。 幸い擦傷と軽い打撲程度で収まっていた。 お騒がせしました。 冬に向け、雪訓に励みます。
テン場に戻り、本山行1番の目標であったチンネ左稜線の登攀成功を祝ってビールで乾杯。


8月16日(日) 晴
熊ノ岩T.S.5:00~6:30→室堂11:45→桑名21:30

朝はゆっくり起きる。 3日間で一番熟睡できた。 3日間の疲れが溜まっているのかいやに疲れやすい。 
特に雷鳥沢から室堂の間ってこんなに長かったけ?と思うほど歩が進まなかった。 
観光客が行き交う階段の途中で何度も立ち止まり、ハアハアと荒い息を整え整え、やっと室堂到着。 


本山行で感じた事
・岩場でのルートファインディングの難しさ、同能力の必要性を実感。
・六峰各ルートから“ラーク!”の声が2日間ひっきりなしであった。 雨後で岩が緩んでいたのか? 
岩の危険性の中で、自分では防ぎようのないもの。 上部にパーティがいる場合登らない以外に対処のしようがないですかね~。 怖~。
・チンネ左稜線。 変化があり、長く、そこそこの難易度で、ロケーションの良いとても楽しいルートであった。
・佐々木は雪訓をしっかり行わなくては。