個人山行報告書

<山域>八ヶ岳東面  天狗尾根、旭岳東稜、権現岳東稜
<日程>2009/2/24~3/1
<メンバー>青山・山田

/24() 曇り~雪

入山のみ。初めての山域なので、アプローチの道が分かるか不安だったが、「美の森」駐車場すぐ脇にそれと分かる林道があった。
林道を2時間弱歩き、途中で「出合小屋→」の看板に導かれて川原に下りて砂防ダムを三つほど越し、1時間強ほどで赤岳沢出合小屋に到着。アプローチ=約3時間。
小屋は採光が悪く、ちょっと暗くて湿った感じだったが中にテントを張る。
天狗尾根、旭岳東稜、権現岳東稜線の取り付きを確認しに行った。水は川原から採れた。

/25() 曇り~みぞれ雪

天狗尾根

天気はイマイチだったが、4:30に出発。小屋を出て5分で赤岳沢に入り、向かって左手のルンゼを詰めて尾根上へ。
トレースが付いていたので楽なもの。しばらくは平凡な樹林帯。森林限界を越える手前で日の出を待つ。
先行パーティーのテントがあったが、沈の模様。
テントを越すと、急な草付に2ピッチ分の真新しい
FIXが張ってあった。
例の先行パーティがアタック用に張ったのかな。有難く使わせてもらう。
天気はといえば、雪がみぞれに変わり、靴もウェアもどんどん濡れてくるし、風も強いし視界も効かないので全然楽しくない!
いよいよ尾根上部の「大天狗」に取り付く。

1ピッチのみ(直登だとⅣ・A1=フリーでⅥかな、正規ルートだとⅢ+)

「大天狗」は縦は30mぐらいだが、横にやたら広い大きな岩塊。
トポによると右から巻くらしいが、正面にも2本ほど直登する自然なラインのルートがあるようなので試登してみる。
A0したりネイリングして強引に突破しようとしたが、全く歯が立たないので1ピッチの懸垂で基部に戻って右から巻く正規ルートへ。
あっさり抜ける。ちなみに、直登していたら大天狗の頭から1ピッチ懸垂で降りないといけない感じだった。


「小天狗」は難なく、というか視界が悪すぎていつの間にか通過。
稜線に抜けていたことも縦走路の看板が出るまで気が付かなかった。
11
:00稜線。みぞれが雨混じりになり、稜線に抜けて一気に風も強まったので、赤岳頂上は諦めてさっさとキレットへ下りにかかる。が、視界が悪くて下降点が分からない!
コンパスと地図を頼りにウロウロするとやっと鎖を発見。
キレットへの下りは縦走路にしては厳しい。谷からの吹き上げを正面からモロにくらい顔面が痛い。
支稜も何本かあるのでルーファイにえらい苦労した。
キレットからツルネへ登り返し、ツルネ東稜を探すが視界が悪く見当たらない。
地形図を確認して「間違い無い!」と思って尾根を下ったが、どうやら違う尾根を下っていたらしく、尾根末端で2ピッチ立ち木で懸垂を強いられた。
懸垂で降りた先が「上ノ権現沢」の下部だったので、後は出合へと下るだけ。
と思ったら途中でアイスには最適な氷瀑が現れもう一発立ち木で懸垂。
気温が高く、本流の氷床を4回ほど踏み抜き、頭まで没する
()。「もう勘弁して・・・」。晩飯のパスタを心の支えにして17:00BC着。
装備がズブ濡れになったので明日は沈とした。

/26() 沈

/27() 沈 

大量に持ってきたコーヒーやレモンティーをシバいたり、FM富士を聞いたりして意外と楽しく過ごせた。

/28() 曇り~晴れ

旭岳東稜

天気も回復し、2沈の鬱憤を晴らすべく5:00出発。
地獄谷の本谷を最初に二俣に分ける尾根が旭岳東稜。
尾根末端から右側、因縁の「上ノ権現沢」を少し詰めたところから硬く締まった雪面を登って尾根上へ。
尾根の中間部あたりに何箇所か嫌らしいクライムダウンとナイフリッジがあり、「利、ロープ出そうか?」と水を向けるも「いや、いけるでしょー
()」と一笑に付されてしまった。頼もしい!
ずっと膝下ぐらいのラッセル。上部でアイゼンが必要なぐらいの草付とクラストした斜面が交互に現れ、変化があって飽きない。
上部岩稜「五段の宮」に到着。一見して簡単そうだが、正規ルートである左側の潅木・草付帯から巻くことにしたが、むしろ難しかったような・・・。以下、全ピッチ利リード。

1ピッチ目(Ⅳ-ぐらい)

潅木・草付壁を左上。日が当たって草付が緩み、アックスが効きにくかったり水が流れ出したりで結構悪い。
岩稜通しに行けばよかった。
ある程度の冷え込みと雪が付いていないと逆に悪くなるようだ。潅木でランナーを採りつつ、エイリアン2発でビレイ。

2ピッチ目(Ⅲ+)

同じような草付壁を抜けてキノコ雪の付いた稜上へ。
稜上で一旦ピッチを切るかどうか迷ったが、潅木がたくさん生えていて、いつでもピッチを切れるみたいなのでロープ一杯進んでもらう。フォローで上がってみると、春山みたく雪が半分腐っていてナイフリッジ上のステップカットは怖かっただろうと思った。

3ピッチ~4ピッチ目

キノコ雪と雪庇に注意。ランナーは潅木で採り放題。

簡単な雪稜を登って頂上へ。たまに晴れ間がのぞくので楽しい。ブロッケン現象も出た。
14
:00頂上。ツルネへ下る。今日は視界も良く、ツルネ東稜がはっきり見える。
チャレンジアルパインによると、ツルネ東稜は「テープや赤布が短い間隔でついている」と書かれているが、それは中間部以下の話で、尾根上部にマーキングは殆ど無い。
実際この日の下降でも間違った支尾根に入り混んだトレースがあった。
「ずっと左寄りに・・・」というのも間違いで、最初の支尾根は右に入り、次の顕著な尾根ジャンクションを左に入る、というのが正解。天気が良いと問題ないだろうが、視界が悪いときは僕たちのケースみたくなるので要注意!16
:00BC着。

/()曇り~晴れ

権現岳東稜

ビバーク覚悟の計画だが、できれば避けたいので4:30出発。
権現沢左股の見事なゴルジュを過ぎてすぐのルンゼを詰める。
初日の取り付き偵察のときは、ルンゼ末端にデブリがあったので心配だったが、今朝はよく冷え込み、かつ雪も落ちきった様子で安定していたので迷わず
GO!キックステップとダガーポジションをバシバシ効めてどんどん高度が上がる!
ルンゼ最上部まで詰めると岩で塞がれたので、右にトラバースした辺りから木登りで強引に尾根上へ。
尾根へ上がると雪量が一気に増えて、腰ラッセル。尾根の下部ではパワー系な木登り帯が何箇所かある。
中間部ぐらいから傾斜が強いところでは頭ラッセル!新雪なら体ごと倒れこんで圧雪できるが、中途半端に雪が硬いのでそれができない。ピッケルのブレードで削ったり、膝蹴り・肘鉄・パンチを喰らわせて雪を崩して足場を固めていく。全然進まない
()
バットレスでも見えたらモチベーションも揚がるだろうが、視界もイマイチ。
「正午までにバットレス」がリミットだったが、酷いラッセルに次第に怒りが沸いてきて、「こうなったらビバークしてでも権現をイワしたる!」と思い、利に「本当にビバークになるかもしれんが良い?」と聞くとなんと即
OK
細めにラッセルを交代しつつ延々と頭ラッセル、たまに膝ラッセルで超嬉しい。
10
:00頃からにわかに晴れてきてバットレスが見えた。ラッセルの労に権現が報いてくれたのか。
そこから先は、「キター!」、「ダ~!
(猪木)」だとか気でも触れたような雄叫びを上げながら余力を考えずに渾身のラッセル。
11
:00取り付き。天気がどんどん良くなってきて、権現東稜の成功を確信し、「頂きま~す」と言い放って青山リードで登攀開始。

1ピッチ目(Ⅲ、出だしワンポイントⅣ-)

バットレス左稜線に突き上げる尾根状を詰めることにする。
最下部は鶏のトサカみたいな岩が露出していて、そのトサカをガバ持ちしながら左側面をトラバースして尾根上へ。
そこから草付をロープ一杯登って立ち木でビレイ。

2ピッチ目(Ⅲ-)

フォローの利がそのままリード。バットレス左稜線基部まで行ってもらう。残置アンカーが無いらしく、立ち木でビレイ。

3ピッチ目(Ⅳ)

左稜線沿いのカンテを登るのは間違い無いが、残置ピンが全くない。意を決して登りにかかる。
傾斜はそれほど無いが、スタンスとなる草付レッジが常にハイステップなのとホールドが外傾しているので手は壁に添えるだけ、足だけで立っていかないといけないのでちょっと緊張。
10mちょっとランナウトしたところでやっとハーケンがあり安心。
そこからはなぜか数メートル置きにハーケンが打ってあり、「遅いわ!」と思った。
30mほど登り、効きの悪い残置ハーケン3枚でビレイ。
ちなみに、フォローで登ってきた利が、「カチ持ちしたホールドが吹っ飛んで片腕一本で体を支えましたよ~
()」で爆笑。
僕も前爪を置いたスタンスが欠けてビクッとした。確かに岩が脆かったよね。

4ピッチ目(Ⅳ-)

ビレイポイントからスラブ状を左上し、右に切り返すと小ハングの下にハーケン2枚のビレイポイント。
このピッチはガバガバで岩も硬く、非常に楽しかった。岩が脆いのは下部だけのようだ。

5ピッチ目(出だしⅣ、あとはⅢ-)

左に巻くラインもあるみたいだが、ビレイポイント正面の2m弱の小ハングを越すことにする。
両手ガバ持ちして、3ステップでハング上にマントル気味に上がる。楽しい~!
そこから終了点まで約30mはⅢ-ぐらいだがノープロテクション。
ロープの流れを整えるために這松にランナーを一本とったのみ。
バットレスの頭付近に生えた立ち木でビレイ=13
:45終了。

縦走路に出たところにザックをデポし、権現頂上へ記念撮影。
ツルネへの稜線は意外に簡単な縦走路だった。ツルネ東稜は前日に完璧なトレースをつけてあるので安心して下れた。
16
:30BC着。残った食料をカッ喰らい、翌日晴天の中を心も晴れやかに下山した。