個人山行報告書
<山域>八ヶ岳西面 阿弥陀北稜~赤岳主稜、石尊稜、南沢大滝、小同心クラック、中山尾根
<日程>2009/2/9~17
<メンバー>青山、山田
2/9(月)晴れ
入山のみ。肩を脱臼するまでに行者小屋BCに着けるかどうかというぐらいの重量のザックを担いで休みながらトボトボ歩く。
昼過ぎにBC設営。
2/10(火)晴れ
阿弥陀北稜~赤岳主稜
中岳沢から北稜下部の尾根へ上がるトレースがバッチリ付いており、労せず尾根上へ。
ジャンクションピークあたりで日の出を迎える。
第一岩峰取り付きは、正面左の雪面から簡単に巻けそうだが、逢えて岩場通しに行くという微妙なロケーション・・・
1ピッチ目(Ⅲ+)、以下グレードは主観的な体感です。
ペツル2個のアンカー。浅い凹角状から稜上へ。
最初の2mぐらいが岩場で後は簡単な草付を登って第二岩峰基部までピッチを伸ばす。
ペツルのアンカー(!)でビレイ。
2ピッチ目(Ⅱぐらい)
あまり覚えていない。
簡単な草付を抜けると長さ4mぐらいのナイフリッジがあり、そこだけ慎重にステップを切りながら抜けると後は頂上まで緩い雪面。
足場を固めてアックスでビレイ。伊藤さん直伝のガイドコンテで頂上へ。
9:00頂上着。BCに帰ってもやることが無いので、中岳を経由して文三郎道まで行き、そのまま赤岳主稜へ継続することに。
鈴鹿のクソ長い縦走をしたおかげで八ヶ岳の山塊がえらく小さく感じる。
文三郎道上部からの赤岳沢のトラバースは雪が締まっていて簡単だった。
見覚えのあるチョックストーンの取り付きは雪で埋まっていた。
赤岳主稜
1ピッチ目(Ⅳ-)
アンカーはペツル2個。出だし2mは垂直なのでちょっと緊張する。
チョックストーン左端が壁と接している溝にピックを引っ掛けて体を上げて、ステミングで体を安定させたらピッケルのシャフトをチョックストーン奥の雪面に深々と突き刺して乗越す。
右に向かうバンドを辿ってペツル2個のアンカーでビレイ。
2ピッチ~4ピッチ目(Ⅰ~Ⅱ-)
2ピッチ目の出だしの岩場を左から巻いて越す(ここだけⅢ)。あとは簡単なミックス状の雪面をサッサと駆け上がる。
先行1パーティーの順番待ちになってしまい、残置アンカーが使えないので、ピナクル岩でピッチを切ったりする。
5ピッチ目(Ⅳ-)
先行パーティーの後、しばらく待った後にスタート。
凹角の出口が難しい。すぐ上にペツルのボルトが打たれてあるが僕の身長ではギリギリ届かない(泣)。
ピックでカリカリ引っかかるところを探してドライツール気味に抜けた。やれやれ。ペツル2個でビレイ。
6ピッチ目(Ⅰ)
先行パーティーが順番を譲ってくれたので一気に加速。
稜線まで簡単な雪面というところに良いピナクル岩があったので、そこでピッチを切る。
あとはコンテで頂上まで。12:30頂上着。
下見を兼ねて地蔵尾根をシリセードを交えて豪快に下降。ズボンの尻が破れてしまった・・・。
トシは地蔵尾根がえらく気に入ったらしくシリセード尾根もとい、「ケツ尾根」と命名していた。
2/11(水)快晴
石尊稜
中山乗越を越えて沢筋に入るところで多分迷うだろうという予想通りに違う沢を詰めてしまい引き返す。
チャレンジアルパインには「急登になるところで沢筋に~」とか書いていあるのにあの記述は違う気がする・・・。
中山乗越からだいぶ下り、川に木橋が渡してある広い雪原から沢を詰めた。
石尊稜末端に着き、下部の雪面を登って取り付きに行こうとしたら酷いラッセル。
諦めて左の尾根状にトラバースするとトレースがあり、「あのラッセルは一体・・・」。
1ピッチ目(Ⅲ)
凹角というか浅く広いルンゼ状の草付を左上して稜上の潅木でビレー。いかにも岩が脆いので簡単だけど嫌な感じだった。
2ピッチ~4ピッチ目
簡単な雪稜。最初はつるべでガンガン登るもスタカットの必要もないぐらい簡単だし、上部岸壁までの見通しも付いたのでコンテで上部岸壁取り付きへ。
5ピッチ目(Ⅲ+)
正面の凹角の出だしが前爪クライミング。そこを抜けるとノコギリ状のカンテでやっと岩っぽい感じ。
「ここで落ちるとロープが切れるな」とか思いながら高度感を楽しんだ。
カンテを抜けた後は裏面のルンゼに入って稜線に抜けるみたいだが、ロープの流れが悪くなるので裏面のルンゼに入る手前のピナクル岩でビレー。
6ピッチ目(Ⅰ)
フォローで上がってきたトシがそのままリード。
カンテをまたいで簡単なルンゼを稜線目指して右上。
残地ハーケンをピナクル岩で補強してビレイ。
後はコンテで稜線へ。12:00稜線着。
時間も余ったので硫黄岳まで縦走して赤岳鉱泉で読書タイム。
5時前ぐらいに衛星電話で山口さんに経過報告(ケロさんは忙しくて電話に出れないと思いまして)。
300円投入したが数分で時間切れ。衛星電話恐るべし。
2/12(木)晴れ
南沢大滝へ。行者小屋からだとかなり下るのでびっくり。入下山のついでじゃないと、これだけを目的に行者小屋から出張するのはアホらしい気がした。
小滝がまず目に入ったので取り合えず高巻きして落ち口上部の立ち木でトップロープを張る。
3人の高年パーティーとご一緒。トップロープを交換したりして各人8本ぐらい登り込んで腕パンパン。大滝に行く気もなくなった。
昨日あたりから激しい歯痛に悩まされていたが、トシにもらった柿ピーをガリッとやった瞬間にアゴに電撃が走り、一時下山することを固く決意!
トシごめんね。
2/13(金)
歯医者。銀歯に残した神経が死んでたらしい。いずれはこうなるらしく、今回はしょうがなかったと思う。
2/14(土)曇りときどき雨
山口・田村両名と美濃戸口の駐車場で待ち合わせて再入山。雨がぱらつき萎えかける。
林道と登山道は凍っていたり、水溜りがあったりで悲惨。気温が異常に高い。僕は体調が悪い。
BC到着後、3人はジョーゴ沢へ。僕はテントで沈。
ジョーゴ沢は氷が解けてまったく駄目だったらしくアイスキャンディーで遊んだとのこと。
午後から浜島・水戸・森山隊が合流し、「爆食家ハマちゃん」が開宴。
チーズクラッカー~漬物~肉の嵐すき焼きうどん〆~白玉ぜんざい、と怒涛の爆食リレーで全員が悶絶状態。
浜島さん、そして食材を荷揚げしてくれたみなさん有難うございました。
2/15(日)快晴
阿弥陀岳北西稜
山口(CL)が参入し、青山、山田の計3名で北西稜へ。
水戸(CL)、浜島、田村、森山の4名は北稜へ。
行者小屋から登山道を下り、先日偵察して確認していた北西稜へのトレースをうっかり見落とし、だいぶ下ってしまった。
背中に山口さんの痛い視線を感じながら引き返してこんどは正解トレースへ。ふうー、嫌な汗かいたぜ。
稜末端あたりで夜明けを迎えて登攀準備。下部3ピッチのⅡ級のセクションはロープを着けずに通過。
4ピッチ目のペツル2個のビレイポイントを過ぎて稜右側のバンドをそのまま進むと、バンドが消えて脆そうなフェース。
ここから全ピッチ山口リードで登攀開始。
1ピッチ目(Ⅲ、だけどⅣ+っぽい)
ペツルのビレイポイントは通り過ぎていたので、足元の潅木でセルフを取る。
バンドから一段右に下がり気味にトラバースしてボロボロの草付フェースを左上。
このフェースが遠めに見ると簡単そうだが、かなり悪い!ここのリードはしたくないぞ!
日の出とあいまって遠くでビレイしている山口さんに後光が差して見えたピッチであった(笑)。ペツル2個でビレイ。
2ピッチ目(Ⅳ、正味Ⅲ-)
ビレイポイントから正面の垂壁を巻くように左に伸びるバンドを高度感満点のトラバース。このトラバースはちょうど靴の幅ぐらいしかない。たまに出っ張った岩が側壁から伸びてきているので、変な体制で狭いバンドをトラバースしないといけないので精神的にⅣ級か。
今回はバンド上の雪も固くトレースもあったのでよかったが、シーズン初だとかなり怖いと思う。バンドの終わりのペツル2個でビレイ。
3ピッチ目(ⅢA1、ⅣA0)
核心ピッチ。ビレイポイント正面から奥に見える凹角目指して右上。
件の凹角は垂壁なのかと思いきや、緩傾斜のスラブ状。プレートアブミを使う方が逆に難しくなるんじゃないのか!、とトシと苦笑いした。
しかしさらに驚くべきことには、ここを山口氏、フリーで越していった・・・。抜け口で「イエイ!」と言っていたが、こっちは驚嘆と呆れの混じった複雑な心境だった。
山口さんのフリーは見なかったことにして青山・山田は豪快にA0を楽しんだ。
小御屋尾根に抜けてあとはちょっと細めの尾根を辿って頂上へ。
北稜組と頂上サミット記念撮影をしたいと思っていたのに、すでに彼らの姿はなくガッカリ。
天気・気温ともにGW状態。下降は中岳沢をランニング。
BCに着くころには動悸・息切れ。
2/16(月)風雪・低温
小同心クラック
アプローチが長いので少し早めの4:30出発。大同心沢を途中まで登り、大同心稜へ上ってひたすら登る。
気温が低く、雪が固く締まっているので大同心稜上部でアイゼンを履いた。
大同心基部に着くころには十分に明るかったが、風雪厳しく、視界も悪い。
小同心へのトラバースは雪が締まっていて歩きやすかったが、スリップはダメージが大きいと思う。
大同心ルンゼをトラバース中にトシのアイゼンが外れてルンゼを滑っていった。
100mほど遠くで止まったので雪面を掘って簡単な弱層テストをしてから、もし雪崩や落石があったら大声でコールしてくれと伝えて僕が拾いにいった。視界が悪く、小同心クラック上部のチムニーが視認できないので取り付きの確定に時間がかかったが、以前きたときにウンコをした広いテラスがあったのが決め手になった。こういう記憶の方が山では頼りになるから笑える。
1ピッチ目(Ⅳ-)
ガバガバの簡単なフェースを左上してチムニーに入り、ちょっと上がるとペツル2個のビレイポイントがあったのでピッチを切った。
2ピッチ目(Ⅳ-)
ガバガバの素直なチムニーで、かつ残置支点も豊富でしっかりしてるので、フォローで上がってきたトシにそのままリードさせてみる。
順調にロープを伸ばしていったが、ビレイポイント直下の正規ルートのチムニーに入らずに、残置ハーケンに導かれてしまい左のフェースを登ってえらく苦労した模様。
その不自然なラインを追うフォローの僕もチムニーから強引なトラバースを強いられ怖い思いをした。
「もっと視野を確保してラインを読め」、「ランニングビレーはトップの墜落確保だけじゃなく、フォローを誘導するのにも重要だ」みたいな説教をしてしまったが、これはリードさせた僕の責任でもある。
3ピッチ目(Ⅲ)
これを抜けると終了点。
直上するラインと右に避けるラインがあるらしいが、直上のラインはかなり傾斜があるので右に逃げた。
ビレイポイントの右側面のバンドを辿って稜上に向かって草付を登り返すルートだったが、ロープの流れがかなり悪く、支点も思ったより乏しいので意外に厳しいピッチとなった。直上ラインを採用した方が良いと思う。
4ピッチ目(Ⅱ)山田リード
視界も悪く、ちょっとした岩場が続きそうだったので、終了点から小同心の頭までスタカット。ペツル2個でビレイ。
横岳頂上直下までコンテで行く。途中に完全に風を避けられる岩小屋があり小休止。
頂上直下の岩場はロープを出すなら2ピッチ。
基部から左上する堅雪の詰まった簡単なガリーがあったのでコンテのままそれを詰めるとハーケン2枚のビレイポイント。そこから上はⅡ級ぐらいのフェースだったので、そこでコンテを解除してスタカットへ。
5ピッチ目(Ⅱ+)
簡単なフェースをこなして稜線に抜けた。
横岳頂上の看板でビレイしようとしたが、腐ってグラグラしていたので雪面にアックスをさしてスタンディングアックスビレー。
コールもまったく届かず、どこかロープが刷れているらしく思うようにロープアップできずにトシが登りだすまでにちょっと時間がかかった。
風雪の稜線でビレイするのは「やっと脱出できる」という喜びに浸れて意外と楽しかった。
鼻水が凍りついたトシの顔がひょっこり出た瞬間は笑えた。ガッチリ握手して地蔵尾根をダッシュ下山。いろいろ課題の見えたクライミングだった。
2/17(火)快晴
中山尾根
昨日とは打って変わってド快晴。これは昨日頑張った簿褒美か!MSRの調子が悪く、出発は遅めの6:00。
それでも取り付きが近いので日の出ちょっと過ぎには取り付き到着。
1ピッチ目(Ⅲ+)
正面のフェースにペツルボルトがあったので、試登してみると意外に手強く、クライムダウンして仕切りなおし。
右に一段下がったところから正規ルートの左上する凹角があり、アングルハーケンでビレイポイントを補強して再開。
凹角の途中から左のフェースに移ってペツル2個でビレイ。
2ピッチ目(体感で2ムーブだけⅣ、本にはグレード記載なし)
このピッチはラインが分かれるのは知っていた。
まずは左の草付帯をトラバースして稜上に出ようと試みたが、ボロボロの草付でアックスもまったく受付けないので「え~どうしよう」と思っていると、トシが「正面の岩場どうですか?」とアドバイスをくれたので、ビレイポイント正面のジェードルを登るとペツルのボルトが出てきて正解。
チャレンジアルパインには記載は無いが、この出だしの岩場はかなり難しく感じた。
このピッチでハーケンを収納したカラビナを落としてしまったが、トシの足元に落ちて事なきを得た。
ギアの扱いは常に気を配らないと、特に手袋をつけてると面倒になるし。岩場を抜けて立ち木でビレイ。
上部岩壁までの雪稜はコンテ。
3ピッチ目(Ⅳ+)
核心の上部岩壁最初のピッチ。浅い凹角状から右手ガストンのフレークをつかんで左のフェースに移るが超難しい!
右手ガストン、左手のピックを岩に引っ掛けて左前爪立ち込み。油汗大噴出。
そこを抜けると体がすっぽり入るチムニーに入り、ステミングなどオポジションをフル使用してズリ上がったところにぺツル2個がありビレイ。
4~5ピッチ目(Ⅱ+)
簡単な草付フェース。ペツル2個でビレイ。
6ピッチ目(Ⅱ-)
最終ピッチ。草付とちょっとしたミックスの出てくる尾根状。ペツル二個でビレイ。ここでようやく陽光を全身に浴びれて超幸せ。
終了点からは縦走路への横断バンドを辿るだけだが、足元は絶壁なので一応ロープを出す。
ビレイポイントと縦走路を繋ぐロープが谷をまたいでチロリアンブリッジ状態になってしまったが、この写真がチャレンジアルパインにも載っている。
こんどはランニングを取ろう。縦走路に出たところでロープを畳み、濃厚ココアをガブ飲みしてガッチリ握手。10:30終了。
そこから地蔵尾根への稜線の縦走は計画をやりきった充実感と無風快晴の稜線漫歩の幸せにドップリ浸かり、昇天してしまいそうになった。
時間もあったのでそのまま下山した。