夏山合宿報告書

<山域>剣沢定着 八ッ峰 Aフェース 魚津高ルート、Cフェース剣稜会ルート~八ッ峰上半縦走
        源次郎Ⅰ峰上部 名古屋大ルート
        チンネ 左稜線(小窓TS)
        雄山、別山、奥大日岳
<日程>2008/8/9~14
<メンバー>山口、伊藤(聡)、田村、森山、浜島、國江、伊藤(登)、百武、鈴木

2008年夏山合宿報告書

8月9日(土) 室堂9:00-別山平B.C.14:00

 今年の夏山合宿は多数参加者の山行となる。合宿前半の入山者は、山口、伊藤(聡)、田村、森山、浜島そして新人の國江。
定着合宿のため、当然ながら入山の荷物は多く気も重い。
重量の半分は酒と食料のはず、しかしながらこれで快適なベース生活が送れるはずだ、きっと・・・。
新人の國江と「今までこの重量は担いだ事がない」とたまに口走るしげさんはさすがにえらそうだった。
が、そうはいっても誰も荷物を持つでもなくベースまで頑張るしかなく協力できるのは「がんばれ」の4文字だけである。
本日は、天気も良くのんびりとB.C.に到着。
テント設営後、山口、森山、浜島、國江で建設中の小屋下の雪渓で雪上訓練実施。
國江は雪上歩行は初めてだったので、最初は腰が引けていたが最後の方では、何となく様になっていたような感じである。
伊藤とかつおは、明日の源次郎1峰岩壁の取り付きの偵察に行った。
本日の晩飯は、焼肉屋はまちゃんが開店し美味しい焼肉とビールでの晩餐であった。
(山口)

8月10日(日)

① 山口、森山
 B.C.5:00-Aフェース取り付き8:15-登攀開始9:00-Aフェース頂上10:15~11:00-Aフェース取り付き出発12:20-B.C.16:00

今年の目標は、チンネ!とばかりに意気込んでいたものの3連休しか取れず六峰Aフェースと成る。
朝5時、予定通りB.C.を出発。天候は、晴れ。暑いものの適度に風が有り登坂日より。しかし、昨日の疲れが取れていず身体中が痛い!
剣沢の雪渓は、昨年のガチガチ(氷)状態とは違いザクザク状態。源次郎尾根取り付き付近までアイゼン無しで行く。
アイゼンを着けた途端に足に負荷がかかり歩きにくくなる。
今年は、雪が多く長次郎谷の雪渓も左俣・右俣共に稜線近くまで有る。
左俣は、何パーティーか登っていたが右俣はシュルンドが横に何本も走りとても登れる状態ではなかった。
雪渓を出てAフェース取り付きに向う途中、浮石が多く落石を起こさないよう慎重に行く。
しかし、これが結構難しい。何時もながら山口君の慎重さと卓越した読みには感心させられる。
取り付きに着いた時には、魚津高ルートに1パーティーが登っていて中大ルートに1パーティーが取り付くところだった。
Cフェースを見ても待ちは無く思ったより空いていた。

1ピッチ目。凹角の所でハングを越えるのに一歩目は分かるものの二歩目が分からずメチャ苦労した。
山口君が「A0で良いよ。」と言ってくれたが何とかクリアー。
ただ、ビレーポイントに着いた時には、息も絶え絶えでビレーを山口君にセットしてもらう体たらく。
2ピッチ目。本番で初めてのカンテ!左右にズド~ンと落ち込んでいる高度感に一瞬腰が引けたが技術的には、問題無かった。
3ピッチ目。1・2ピッチ目とは違い斜度も低くホールドやスタンスも有り簡単だった。
最後、左側のハイマツ沿いに登ろうとしたがハイマツを掴もうとすると浮石が動き落石を起こすので右側を登り完了。
Aフェース ピークで45分程景色を楽しむ。
Ⅴ Ⅵのコルへは、5mと20mの2回の懸垂下降と1回のクライムダウン(シゲの練習)で降りたが、2回目をダブルで行なえばクライムダウン無しで降りられた。
Aフェース取り付きにデポして有った荷物を回収して下山開始。アイゼン無しで下った。
バテバテのシゲは、雪渓で徐々に踏ん張りが利かなくなり長次郎雪渓下部で3回ほどスリップ、滑落停止まがいの事をした。
今回、ゲレンデと本番の違いを思い知らされたのと、合い変わらずの体力不足を痛感した。
(森山)

② 伊藤(聡)、田村
 B.C.4:15-源次郎尾根取り付き6:00-源次郎のコル8:00-源次郎1峰上部岩壁名古屋大ルート10:00-登攀終了15:00-剣岳18:30-B.C.21:30
 
下降点を探すが意外に悪く、80度ぐらいの雪壁のクライムダウンのため中止。
また、ルート上に流れている雪融水も悪く感じた。上部の名古屋大ルートのみに計画変更。
源次郎のコルから取り付きまでのトラバースが悪く、時間がかかる。上部岩壁には他に2パーティー入っていて、両パーティー成城大ルート。
(伊藤(聡))

③ 浜島、國江
 B.C.5:30-別山7:00-真砂岳9:00-雄山10:00~10:15-真砂岳12:00-別山13:00-B.C.13:30

ベースからひたすら登り別山に到着。10分程休憩を取り、景色を拝む。剣岳が美しい。
そしてひたすら岩をつかみ、登り真砂岳に到着。少々の休憩後雄山へ。
付いて行くので必死だったので、記憶は定かでないが、これまでの登りで一番急だった様に思う。
雄山頂上には、なんとも人が多い。
太陽が強く、焼かれているのがわかる。登山は4度程しか経験していないが、今まで一番ばて方が少ないように思う。
だが、下り途中足がもつれ、2度程尻から滑る。また、手の指が大変むくんでおり、自分の身体が意外とお疲れなのに気付く。
帰りの真砂岳の日陰にてオレンジを食らう。山でのビタミンCはとても美味しく、貴重であった。
その後、別山へ登り返し「神様、頂上はまだですか?」と心に念じながらも、浜島さんの背中をただ、ただ見つめ付いて行くのみ。
別山に到着。とにかく暑かった。これであとは下りだと思うと心が弾む。
休憩後B.C.へ、浜島さんの軽快な下りと比べると自分の下りがたどたどしいのがわかる。
また、途中“ラク!”と言われていた様だが全く気付かず。
自分が下る事のみに全神経を集中させており、周りまでも気を回せない事が判明。B.C.になんとか生還できました。
(國江)

8月11日(月)

① 浜島、國江
 B.C.5:15-剣山荘6:00-一服剣6:30-7:45前剣-剣岳10:00~10:15-13:30剣山荘-B.C.14:40

 剣山荘で少し休んでから一服剣へ。
一服剣までも「これを道と呼んでいいのか、どうなのか?」を思わされるような所を通り、岩に必死にへばりつく。
浜島さんのズボンがきれいなのに対し、自分のズボンは砂だらけだ。おそらく、岩側にへばりついていたからであろう。
取り敢えず、行きながら思った。「三点支持なんて無理、四点支持でなきゃ」と。
一服剣に着き、ここまでで“一服”程度なのか、私にとっては十二分にメインディッシュ並である。これからの行程に不安が募る。
今度は、前剣へひたすら岩をつかみながら登る。
私の呼吸が荒いのに対し、浜島さんの呼吸は全く乱れず。いやはや、同じホモサピエンスとは思えない。
前剣に着き、目の前の剣岳を見ながらしばしの休憩。それにしても剣はでかい。
剣への登りは、何て急なんだ!何故、この山のルートを開拓した人は、この山を登ろうと思ったのか。
進んで行くと、目の前に鎖。山の角度は90度。これを登るのか・・・。「神様」と一瞬思ってしまう。
鎖を持ち足場を必死に押さえ登る。登りながら思うのは、もはや恐怖感でなく「ここで死ねない!」と思うのみ。
頭の中でNHK大河ドラマ功名が辻の「お命の持ち帰りこそ功名の?にございます。」との仲間ゆきえの声が響く。
必死の思いで鎖を登り切り、岩をつかみ登り頂上に到着。頂上にてしばしの休憩。
浜島さんが出して下さるルビーグレープフルーツがなんとも有難い。
ここでやっと景色を落ち着いて眺める事が出来た気がする。
頂上を後にし、下っていくが足がもつれにもつれ、体がふらふらで下っていけない。
途中“蟹の横ばい”は一瞬ずれ落ちるがなんとか持ちこたえる。
私が亀の如く下っていく為、後ろから追い越していく人多数。剣山荘に着き、またもやヘロヘロになりながらB.C.へ。
 この日、國江は命の持ち帰りは出来、生還したが、精神的にはバテバテで半死状態であった。
(國江)

② 山口、田村 B.C.8:00-真砂沢ロッジ9:00-二股10:00-12:30池の平小屋-池の平山14:00-小窓15:30

8月12日(火)

① 伊藤(聡)、國江
 B.C.5:40-御前小屋6:45-奥大日岳9:30-引き返し地点11:00-13:00奥大日岳-御前小屋15:00-B.C.16:00

 御前小屋に着き、しばしの休憩。浜島さんとはここでさよならをする。
当初、下り道が多い。聡さんからストックの使い方の指示を受けるも、あまり上手に使いこなせない。
進んでいくと、聡さんと國江との距離がどんどん広がっていく。
聡さんの速度に驚く。まるで“うなぎと亀”だ。
イソップのうさぎと亀は、うさぎが休み寝る為追い越せるが、聡さんは一向に止まることはないので、いつの間にやら姿が消えてしまう事もしばしば。どん亀國江を待って下さっていることに有難さを感じる。
奥大日岳に到着。標高が前日二日間の山より低い為か暑い。そして、大日岳がはるか彼方にそびえ立っているのが見える。
しばしの休憩をとり、大日岳に向かう。
それにしても道中暑い。太陽がこれでもかという位照りつける。
途中、足を崩し、道脇の笹薮に落ちかける。
実は奥大日岳にたどり着く前にも、笹薮に落ちかけたが、今度はこれで二回目となる。
二回目の時は、笹をつかむだけでは、登山道に上がれなかった為、聡さんに引っ張り上げて頂いた。
この経験で、笹薮の根の張りの強さを思った。笹の根の張りが強くなければ、私はそのまま滑落し、下手すれば昇天していただろう。
笹と聡さんは命の恩人であった。
(國江)

② 山口、田村 小窓5:20-三ノ窓8:15-三ノ窓出発9:00-チンネ左稜線登攀開始9:50-登攀終了15:50-三ノ窓17:00

8月13日(水)

① 山口、田村 三ノ窓7:00-池ノ谷乗越8:00-剣岳9:00~9:30-B.C.11:30

② 伊藤(登)、百武、鈴木、山口(由美)⇒入山

8月14日(木)

① 伊藤(登)、鈴木 B.C.4:45-長次郎出合6:15~6:40-B.C.8:00

 前日夜から時々の雨と強風で天候悪化が予想された。
朝3時に起床するも風はおさまらないが、雨は止んでいたので出発を1時間遅らせる事にし、5・6のコルまで取り敢えず行く事にする。
南からの暖かい風が吹き、雪渓の上でも半袖1枚で十分。
段々と雲が下がってきており、長次郎出合で引き返す事に決定!すると、とたんに雨が降り始め、B.C.に着く頃には本降りになってしまった。
残念な一日であった。