事故報告書

<山域>北アルプス 滝谷
<日程>2008/07/26
<メンバー>伊藤(聡)、田村、青山


日時 : 2008年7月26日(土) 17:00ごろ
場所 : 雄滝・雌滝間の尾根から雄滝落ち口への悪い草付きトラバース道
事故の形態 : 足場崩落による転落(ロープ装着・トップ落ち)
怪我具合 : 左人差し指の裂傷、歯冠破折、その他切り傷多数
編成 : トップ=田村、ビレイヤー=青山
状況 : 16:00ごろ、雪渓の状態が悪く滑滝で敗退を決断した。
      往路を引き返すべく、雄滝落ち口から雄滝・雌滝間の尾根へのトラバースに差し掛かる。
      ここは滑落すると雄滝の落ち口まで150mほど墜落してしまう危険性があるため、
      行きも2ピッチロープを出した箇所である。
      田村をトップ、青山をビレイヤーの編成とした。

      ゆるく湾曲するトラバース道のため、トップの姿は見えない。滝の音で声も届かない。
      突然、ロープが流れ出す。衝撃は感じなかったため、一瞬ザイルアップかと思ったが、
      すぐに止める。結果的に2mほどロープを流すことになった。
      直後にトラバース道から落石の音が大きく響き、緊張が走る。
      (このとき、田村は自力で登り返し行っていたが、顔面に落石を受け、歯を折ってしまう。)
      テンションした後、ロープを手繰ることができたので、田村の意識ありと判断し、様子を見る。
      しかし、その後ロープの動きが5分程度止まってしまったため、伊藤が現場まで様子を見る。

      ランナーが1本取ってある箇所を過ぎたところで、すっぱり切れ落ちている草付きの足場が
      すべて崩れ、ロープが下に向かっている先に田村を確認する。
      お互いに声を掛け、骨などは問題ないことを確認した。しかし、手と顔は血まみれであった。

      すぐにプルージックで自己脱出するように伊藤から田村に指示する。
      田村は5分ほどかけて自力でトラバース道まで戻る。
      田村によれば、突然1mほどの足場がすべて崩れ為す術もなかったとのこと。

      伊藤は青山のいるビレイ点まで戻り、別のロープを使いリードする。
      転落箇所は非常に悪い状態でさらに足場が崩れる可能性もあった。
      固定ロープを構築し、田村を通過させ、続いて青山が通過した。

      その後さらにトラバース道を1ピッチ伸ばし、雄滝・雌滝の尾根で時間切れ。
      尾根上で幕営する。田村の食欲はなく、栄養ゼリー1袋のみ。

      翌日は、悪いブッシュを下り雄滝落ち口左まで懸垂下降する。
      田村の左手の握力はなくなっていたため、懸垂下降地点までロワーダウンで下ろす。
      そこから、シュルンドを超えるいやらしい懸垂下降(40m)を行い、無事に下山した。