八ッ峰上半縦走報告書

<山域>北アルプス北部 剣岳・Ⅵ峰Cフェース剣稜会~八峰上半~剣岳
<日程>2007/09/21-09/24
<メンバー>伊藤(聡)・水戸

9/21(金) 快晴 名古屋=立山-室堂(10:00)-(14:00)剣沢BC

9/22(土) 晴のち曇り一時雨
(3:30)起床-(5:00)剣沢出発-(9:00)Ⅵ峰取付(9:15)-(11:30)Ⅵ峰頭
(12:00)-(16:30)池ノ谷ガリーへの下降-(17:00)八峰の頭でビバーク

9/23(日) 曇りのち晴
(6:00)起床-(6:30)出発-(9:00)剣岳山頂(9:15)-(11:00)剣山荘
(11:30)-(12:00)剣沢

9/24(月) 晴のち雨 (6:00)起床-(9:00)撤収-(12:30)室堂


4年越し、5度目でようやくピークに到達。初めて読んだ新田次郎の本が「剣岳・点の記」。
剣に登るのならバリエーションで・・・、自分の技量を省みず憧れ続けたルート。
2004年から剣に門前払いを受け続けてきたので、大袈裟でなく嬉しかった。
7月に八峰縦走を計画したが、下半までで下山。
なんとか、上半の継続をしたかった。聡さんの捻挫も予想以上に回復され、モチベーションは高まる。

7月下旬に来た時とはうって変わって、雪渓が少ない。が、氷結しておりアイゼン無しでは心許なかっただろう。
源次郎の取付き付近の夏道終了地点でアイゼンを装着する。
山岳警備隊からの情報通りⅠ峰・Ⅱ峰間ルンゼ辺りから右岸の岩稜帯に乗り移り、アイゼンを外して歩行。
雪渓歩行のほうが楽である。ちっとも進んでいるような気がしない。アプローチでへばる。

今日は、連休初日なので社会人パーティはほとんどが入山日であろう。
お蔭で上半縦走のガイドパーティ以外、誰もいない。BOSS隊も入山してくる予定だ。
今夜は一緒に焼肉で呑めるはずだ。(った・・・。またしてもビバークしてしまい、合流は翌日となる。)

ようやく、Ⅵ峰Cフェースの取付きに着く。
奇数ピッチをリードさせて欲しいと宣言していたが、Ⅱ、Ⅲ級といえども初見でやや不安になってくる。臆病なのだ。
そのためにトレーニングを積んできたのだからと、自分に言いきかせ、スタートする。
1時間半で抜けたいと聡さんから言われていた。
スピーディにシステムを構築してツルベで登攀すれば行けるのでは、と思っていたが、6ピッチを2時間ちょいかかってしまった。
本チャンでモタモタしていてはいけない。
登攀自体は快適でとても楽しかった。
ランナウトするようなところもあったが、自分の受け持ちはリッジ以外、50mいっぱいに近い状態で終了点だった。
もっと、早く登るようにしたいものだ。この縦走の中で一番楽な行程だったと思う。
いよいよこれからが本番だ。ちょうど12時。本峰に16時到着を目論んで出発する。

ルートをお互い確認。踏み跡のしっかりした道をわずかに進んですぐのルンゼを登攀することにした。
忠実に稜線を辿る・・・たぶん冬のルートを登攀してしまったようだ。巻き道をほとんど歩いていない。
Ⅶ峰の下降地点まで厳しくも楽しい登攀が続いた。スタカットではなく、コンテで行くことにした。

Ⅶ峰登攀中、ガスが濃くなってきたが一瞬、背後から太陽光が・・・わぁお!ブロッケン現象だ!カメラに収められなかったのが残念。
剣は迎えてくれているんだろうか??

Ⅶ峰の懸垂地点・・・ギャップの先が良く分からない・・・、正面のⅧ峰のルートは右上していくことは想像できたが、いかんせん、取付きに自信がなかった。
下りて左だったとは・・・右の下のほう(三の窓側)に踏み跡を確認できたので50mいっぱい懸垂下降する。
この頃は一旦、ガスが晴れててくれた。残置スリングを切り、新しく赤いスリングを長くセット。
正直、この懸垂がこの日一番の核心だった。
降り立った場所からのリカバリーを考えながらだったのと、ニードルの基部であることの確信で降りたのだが不安だった。

長い下降で聡さんからのコールがなかなか無い。
声を掛ける。やはり、ニードルの基部まで降りると言う。良かった。
それから巻き道左の明るいルンゼを登ることにする。
Ⅷ峰へ登っていると思っているのだが実際、分からない。Ⅷ峰を結果、巻いたのか??

八峰の頭に向かっていると思い岩稜を登ったが、見えるはずの本峰がない。
雲の中で見えないだけか??コンパスを出す。あれれ、東に向かってる。
岩が門のようになっている箇所まで戻り、数mザレた箇所を下ったら懸垂支点があった。
そうか、ここが池ノ谷乗越への懸垂地点か!岩屑のガレガレを登った頂きは、快適なテントサイトであった。
ちょっと急な岩稜を少し下り、岩門のようになっているところも快適なテントサイトで、先人がいた。
彼らが「今日はここでビバークです。明日はチンネ登攀します。」と言う。
我々もビバークするかどうか、時間的(17:00になろうとしている)、天候的(ガスガスで雨になりそう)にも決めないといけない。
ビバーク・・・みんな心配しているだろうなぁ・・・。(実は全然、心配されていなかったようだ。「ビバーク好き」と思われているらしい・・・。)

雨と風対策にツエルトをしっかり張る。食料は乏しかったが、聡さんのアンパンと念の為に持参くださった火気がフル稼働。
20:00くらいから降雨。2時間くらいでやみ、風が吹く。
夜半、張り綱をなおしに外に出たら、それはそれは幻想的な朧月。
眼下に広がる富山平野の灯りもなんとも幻想的だった。

朝の天気はよくなかった。ガスが晴れてくれるといいのだが・・・。
BOSS隊はきっと、私たちを抜かす勢いでトレースしてくるんだろうな、などと思いながら出発。
本峰に向かうにつれ天気が回復。

やはりあの地点でビバークして正解だった。
剣の山頂まではあっという間ではあったが、あの時間、あの天候で北方稜線は歩きたくない。
体力的にも集中力も欠けて危険すぎる。

今回はあーでもない、こーでもないと模索しながらだったが、来年、もっとスマートに登りたいと思う。
聡さんは、「えー、まった行くのぉ。別にいいけどぉ。」とあまり乗り気ではないが、ぜひお付き合いの程よろしくお願いします。

番外編)
映画「剣岳・点の記」の撮影隊と遭遇。木村監督は真っ黒に日焼けして土方か山男か・・・。
まだ2年後だが、本格山岳映画への期待は膨らむ。