2006年度GW合宿報告書
<山域> 北アルプス 小梨平ベース 西穂高岳、北穂高岳、コブ尾根
<日程> 2006/4/28~5/7
<メンバー> 山口、田村、後平
<行程>
4/28 (金) 名古屋=沢渡
4/29 (土) 沢渡=上高地(小梨平にてベース)-中又白沢出会にて雪上訓練-ベース
4/30 (日) ベース-岳沢-S字ルンゼ(コブ尾根敗退)-岳沢-ベース
5/1 (月) ベース-岳沢-コブの頭(コブ尾根敗退)-岳沢-ベース
5/2 (火) <休養日>
5/3 (水) (田村・後平) ベース-西穂山荘-西穂高岳-西穂沢下降-岳沢-ベース
(山口) ベース-横尾-涸沢-北穂東稜-北穂高岳-涸沢岳-ザイテングラート下降-涸沢-横尾-ベース
5/4 (木) ベース-西穂沢出会-西穂涸沢-西穂沢出会-ベース
5/5 (金) ベース-岳沢-コブ尾根-天狗のコル-岳沢-ベース
5/6 (土) ベース-岳沢-畳岩尾根(途中で敗退)-岳沢-ベース
5/7 (日) ベース(上高地)=沢渡=名古屋
<詳細>
4/28(金) 名古屋21:00=沢渡(翌朝)2:00
合宿へ旅立つ日。車の中は、クライミングの道具やら食料やらビールの箱やらで、ゴッチャゴチャ。フォレスターの大きな荷台に収まりきらない荷物が、後部座席まではみ出してる。そんな車内とは裏腹に、心はスッキリ。久々に仕事を離れ、思いっきり大自然を満喫できるのだから。厳しいはずの合宿に、期待半分、不安半分。帰ってくる頃には、少しは逞しくなっていたいな。
4/29(土) 起床6:00 就寝19:00 夕食:焼肉
沢渡7:30=上高地(小梨平にてベース)8:00/9:00-中又白沢付近にて雪上訓練11:00/14:00-ベース17:00
夜中に駐車場に着いたこともあり、ノンビリ起床。ザックに荷物を詰め込む。100ℓ近くある巨大なザックがパンパンだ!!!さらに、小さなザックを持って、と。要はダブルザックってやつ。重さは、40kgは超えてるだろうか。うー、荷物に潰される・・・
今年は3~4月に大量の雪が降った。お陰で上高地も、1メートル以上の雪が残ってる!上高地バスターミナルも、いたる所に雪の壁が立ちはだかってて、歩きにくいったらありゃしない。昨年と一昨年は、上高地は雪無かったはずだけどなー。こりゃ、登る時は苦労しそうだ・・・
メチャンコ重たい荷物にヒーヒー言いながら、小梨平キャンプ場に無事到着。まだGWじゃない会社も多いので、キャンプ場は閑散としてる。受付の子も暇そうだ。テントを張って、荷物の整理が終わったら、早速出発!
今日は、雪上訓練の日。適当な斜面を求めて、約2時間。中又白に到着。雪崩の爪痕が生々しい。今年は、本当にたくさん雪が降ったんだなぁ~
雪崩の危険の無い場所を選んで、練習開始。かなりの急斜面なので、落ちる方はちょっと緊張。でも慣れてくれば、こっちのもの。急斜面にダイビング!!!ゴロゴロと急斜面を駆け回る。
十分に訓練したら、テント場へGO!「焼肉が俺達を待ってる」そう思うと、足取りも軽くなるもの。その夜は、焚き火を囲んで焼肉。美味かった~
4/30(日) 起床1:00 就寝19:00 夕食:パスタ 温泉あり!
ベース2:00-岳沢4:30-S字ルンゼ取付6:30/9:00-S字ルンゼ途中でコブ尾根敗退11:30-岳沢-ベース
いよいよ本格的な合宿開始の日。夜中の1時起床、2時出発。満天の夜空の元・・・であれば気分も良いけれど、あいにくの曇り空。まぁ、雨が降ってないだけ良いか。 今日の予定は「コブ尾根」。今回は準備運動を兼ねてのチャレンジだ。
しかし・・・コブ尾根の取付へと登り始めてまもなく、メンバーの一人が体調悪く、途中で引き返してゆく。
取り付きに到着。登攀具を付ける。気合を入れて、出発だ!まずは「S字ルンゼ」を登る。傾斜は50~60度くらいだろうか。雪が硬く、雪と言うより氷だ。落ちると、下まで一直線。ロープを付けて無いので、ミスは許されない。慎重に、素早く・・・
途中まで登ったところで、ちょっとルートミス。時間も遅く、天気も悪いので、引き返す事にする。準備運動程度のルートの予定が、登れないなんて。。せっかく早く降りたので、上高地温泉へ。良い湯だな~
5/1(月) 起床1:00 就寝19:00 夕食:パスタ
ベース2:00-岳沢4:30/6:00-S字ルンゼ取付7:30/11:30-巨大な雪庇-コブの頭12:30/15:30-敗退-岳沢-ベース17:00
今日こそ!と気持ちも新たに、早起きする。でも、今日もあいにくの天気。まぁ、仕方ない。昨日不調だったメンバーも、回復した様子。みんな、元気にサクサクと登る。 昨日は緊張したS字ルンゼも、今日は少し雪が軟らかい。氷に比べりゃ、スリップしても止まる可能性が高いので、ちょっと気楽だ。代わりに、雪崩の危険があるので、サッサと登りきる。
登りきると、そこは尾根の上。ちょっと休憩。暖かい紅茶が、体に染み渡る。一日頑張るのに、紅茶は500ml。チビチビと大切に飲む。少量のチョコを食べて、元気回復!
休憩直後に巨大な雪庇に出会う。慎重に、ロープを出して越えていく。この尾根のGW一番乗りらしく、トレースが全く雪の上に無い。うなさんが、先頭で引っ張ってくれる。流石、体力あるな~
このルートの核心、「コブの頭」に差し掛かる。・・・と言っても、岩は得意分野。問題なく登りきる。あとちょっとでクライミング終了だ!と思ったが、今年の雪は、異常な量。大量の雪に阻まれて、そこから先に進むと危険な状況。天気も悪くなってきた。ゴーゴー風が吹き、とても寒い!見ると、温度計はマイナスをさしている。
条件があまりに悪いので、今日も引き返す事にする。残念!!!!!かなり上まで登って来たので、引き返すのも一苦労。事故は下りに起きるもの。慎重に、慎重に。
ヘトヘトに疲れて、テント到着。明日は休養日なので、ノンビリとパスタを食い、ビールを飲む。改めて、悔しさが湧き上がってきた。絶対にリベンジするぞ!
5/2(火) 起床8:00 就寝19:00 ブランチ:サンドイッチ 夕食:パスタ 温泉あり!
<休養日>
夜中に、物凄い雷が荒れ狂った。やっぱり、山の荒れた天気は恐ろしい。たかさんに聞くと、「雷?雨??知らないぞ!」との事。図太いな、この人は!うなさんも俺も気付いて起きたのに。
休養日なので、8時過ぎにモゾモゾ起きだし、ゆっくりブランチ。卵焼いて、ハム焼いて、サンドイッチで乾杯だ!
うなさんは、大学の授業があるとかで、今日は日帰りで名古屋へ。上高地から登校とは気合入ってるな~!
5/3(水) 起床5:30 就寝21:00 夕食:すき焼き
(かつお・うなさん)
ベース7:30-西穂登山口8:00/10:20-西穂山荘13:10/13:30-西穂高岳-西穂沢下降13:50-岳沢-ベース15:00
(山口)
ベース3:00-横尾5:00/7:00-涸沢10:00-北穂東稜11:30-北穂高岳14:00/16:15-涸沢岳-ザイテングラート下降-涸沢-横尾-ベース16:15
昨日、学校に行ってたメンバーを待って、出発。時間が遅いので、今日は軽い行程。天気も良く、一昨日のコブ尾根と違って、一般登山道なので、気楽そのもの。自然にペースは上がる。立ち寄った西穂山荘は、大勢の人人人・・・。そういえば、普通の会社のGW初日だったっけ。
写真撮ったりしつつ、西穂高岳へ。途中、ヘリを発見!最初は荷揚げかな・・・って思ったけど、これから行く予定の尾根上をウロウロ飛んでる。ありゃ、救助してる感じだぞ!後で聞いた話では、実は滑落者が出たらしい。とは言っても、10mくらい落ちて、ただの打撲だったとか。打撲くらいでヘリ呼ぶなー。もし、同時に重大な事故が発生してたら・・・救助に行けないやんかー。気を取り直して西穂高岳へ。一般登山道としてはちょっとレベルが高いけど、ロープ出すほどの場所は無く、快調に頂上到着。どこで滑落したんだ?まぁ、良いや。
頂上でノンビリ休憩し、頂上から上高地へ続く“西穂沢”を下る。シリセードで。西穂沢は登ると3時間はかかるルート。けど、シリセードなら・・・10分くらい。速いって事は、雪崩とかの危険が無くなるって事。スキーの爽快感もあって、シリセード最高!
一気に滑り降り、うなさんを待つ。・・・が、待てども待てどもやって来ない。先に降りたのかな?って思い、上高地へ。「温泉入りたい」って言ってたし、先に向かったのかも。しかし・・・上高地にもいない!嫌な汗が出てくる。遭難か!?
とりあえず、他のルートに行ってたリーダーを待ち、捜索に出かける準備をする。さぁ、探しにいこう、としたその矢先、走ってくる人影が。あっ、うなさんだ!「ほ~~~~~っ」と一安心。でも、ザックも無いし、走りもぎこちない。どうしたんだろう?
聞くと、シリセードをしている最中に“肩を脱臼した”との事。必死に降りてきたけど、ザックは途中で失くしたようだ。途中でお医者さん(「医学博士」だったらしい)と偶然会い、肩をはめなおしてもらう事ができた事は、不幸中の幸い。
とにかく、本当に心配した。帰って来て、本当に良かった~~~。肩が痛くて上がらないようだが。帰ってきた事を祝い、すき焼きとビールで乾杯。ザックは、明日探しに行く事にしよう。(かつお)
本日は久し振りに単独での登山。仲間と一緒に行くのも好きだけど、一人は一人で結構楽しいもんだ。横尾まで順調に飛ばし、ここからは本谷沿いにトレースを進む。GWで久し振りに夏道でない所を行き改めて雪の多さを実感する。
涸沢に到着し、北穂東稜に目をやると尾根の取り付きの沢を詰めてるパーティーがいた。やはり涸沢に7時到着では取り付き一番とはいかない。尾根の取り付きの沢出合で登攀具とアイゼンを装着し登り始める。沢上部は完全にアイゼンとピッケルの世界で足首の硬い僕にとっては少々つらかったが、それでもなかなかに楽しい。稜線に抜けてからゴジラの背手前に着くと、涸沢で眺めていた先行パーティーがFIXを張っていた。当然順番待ちなのでナイフエッジとなった稜線に腰を落とし、タバコを吸い始める。この日は天気も良く、風もそれほどないのでのんびりと時間をつぶす。30分程してから再び登り始め、なんなくこのルートの核心部分を通過する。本来なら懸垂下降があるはずだが、今年はきれいなナイフエッジの下降となっていた。ここで先行パーティーを抜かし大盛況となっている北穂高岳へ到着。涸沢岳側に目をやると、この先からはトレースがなかったので直に出発する。基本的には夏道を辿るのだが、途中雪面がいやらしい部分は稜線に上がったりしいろいろとルートを探す。やはり、これこそ本来の登山であり心も浮き立つ。穂高山荘についてからザイテングラートをとぼとぼと下り始め、のんびりと上高地へ帰ってった。(山口)
5/4(木) 起床5:00 就寝17:30 夕食:焼肉 温泉あり!
ベース6:30-西穂沢出会8:00/9:20-西穂沢でザック発見!-西穂沢出会-ベース11:00
昨日怪我したメンバーは、肩が上がらないままなので、名古屋へ強制送還。早く治してくれよ!
俺とたかさんは、失くなったザックを探しに行く。雪崩で埋もれてなきゃ良いけど。二人分の荷物を俺が背負い(じゃんけんに負けた(T-T))、たかさんは空身。トレーニングになるから、良いさー(って思っとこ)
昨日は滑り降りた西穂沢を登る。早く見つけたい!気持ちが通じたのか、沢の中間くらいで無事発見!良かった、良かった。帰りは今日も、シリセード。このシリセードのお陰で、俺のカッパは尻に大きな穴が開き、ご臨終。まぁ、長い事使ったから、よしとしよう。でも、明日からどうしよう・・・
この日も、温泉へ。温泉三昧で、幸せだなぁ。ザックが見つかった事を祝って、焼肉とビールで乾杯!明日こそ、コブ尾根リベンジだ!!!
5/5(金) 起床0:30 就寝19:00 夕食:パスタ 温泉あり!
ベース1:30-S字ルンゼ取付4:30/7:30-コブの取付8:00-コブの頭10:00/10:15-コブ尾根終了11:30-天狗のコル-岳沢12:40-ベース13:15
「3度目の正直」この言葉を信じて、出発。今日は、抜群の天気だ。コブ尾根に向かう途中の休憩で、ヘッドランプを消し、満天の星空を見上げる。信じられないくらい多くの星が瞬いている。天の川もクッキリ。「あっ、流れ星!」本当に明るい流れ星が、一つ、二つ・・・。男二人でも、ロマンチックな雰囲気になってしまう。
歩き慣れた雪の上を、一歩一歩進んでいく。頭上には、満天の星空。足元には巨大な雪崩の跡。100%の自然に包まれ、心はいろんな所へ飛んでいく。心の行方はとどまる事を知らず、都会の日々の生活では、普段考えない事ばかり、とりとめも無く溢れ出してくる。
今日の行程は、順調だ。S字ルンゼを一気に登りきり、巨大な雪庇をこえる。適度な休憩と、その時に飲む熱い紅茶が、気持ちと体を引き上げてくれる。ルートの難所も、ほとんどロープと使わずサクサクと登る。適度な緊張と、軽い体が心地良い。「最高!!」
難所を越えてからの長い雪の斜面も、気持ちよくドンドン登り、稜線へ。一般登山道と合流。標高が高いため、風が冷たい。そんな中、たかさんがおもむろにパンとハムを取り出す。サンドイッチだ!いつもはチョコレートを少しだけ持って登る。それと比べると、物凄いご馳走だ!「美味い!!!」
休憩を終え、帰りの旅路へ。西穂への稜線を歩くのだが、雪と岩と氷がミックスしてて、なかなか難しい。ここでも、ミスは命取り。慎重に、素早く、大胆に・・・難しいなぁ。まだまだ、力不足です。
稜線を歩き終え、「天狗沢」を下降する。ここでも、もちろんシリセード。特に今日は雪崩の危険がありそうなので、素早く抜ける事にする。とは言っても、怪我はしないように・・・
上高地まで、走るように駆け下り、「お疲れ様!」。3度目の正直で登りきった充実感に浸りつつ、二人で乾杯!登れて良かった。本当なら、あと一人とも一緒に喜びを分かち合いたかったな。
合宿はまだ二日ある、気合入れなおさなきゃ、と思いつつ、今日の爽快なクライミングに酔いしれていた。
5/6(土) 起床3:30 就寝19:00 夕食:パスタ、缶詰
ベース4:45-畳岩尾根取付6:30/7:30-ルンゼ上10:30/11:00-6ピッチ目で敗退12:30-ルンゼ上13:00-岳沢-ベース14:00
気合を入れなおして、1時起き2時出発!の予定が、見事に寝坊。しかも、2時間半も!まぁ、今さら時間は戻ってこないので、気を取り直して準備。予定通りのルートへと急ぐ。
今日の狙いは「畳岩尾根」。初心者向けの尾根だけど、今年は雪が多いので、要注意。傾斜が緩いので、雪がメチャンコ残ってるから。
急なルンゼを登り、尾根に出て、すぐにロープをつける。6ピッチほど登ったところで、超危険ポイントに到着。雪の上に、氷のブロックが乗っており、さらにその上に雪が乗っている。こりゃ、触ったら落ちてきそうだ。氷のブロックに直撃されたら、たまったもんじゃない。たかさんが果敢にチャレンジするが、危険すぎて戻ってくる。
ここさえ抜ければ、頂上が見える。けど、危険すぎる。考えた末に出した結論は、敗退。引き返すことにした。命あってのクライミング。また、条件の良い時に出直そう。
下りは、いつも通りのシリセード。途中でたかさんは俺を見失ったらしい。ちょっとして合流した時、本気で心配してくれた気持ちが伝わってきて、涙が出そうだった。
明日は雨の予報なので、今日は撤収。の予定が、思わずビールを飲みだした二人。そのままノンストップで飲み続け、「明日帰るか~」って事になる。食料は大量にあるし、急遽、打ち上げ開始!盛大に焚き火をしつつ、長かった合宿を振り返る。俺としては、大きく成長した気がする。本当に、楽しかった。ハプニングだらけだったけど。
5/7(日) 起床
ベース(上高地)=沢渡=名古屋
雨音で目を覚ます。覚悟してたけど、気分はドンヨリ。でも、帰らないと明日から仕事が待ってる。行きと同じく大量の荷物に押し潰されつつ、雨にも濡れながら、上高地バスターミナルへ。車で適当な温泉に入って、名古屋へ。